2011 年 67 巻 3 号 p. 300-310
近年,サステイナビリティを実現する都市コンパクト化の重要性が認識され,実際にそれを念頭に置いた都市構造計画が各所で見られるようになってきた.しかし,例えば郊外において自動車に非常に依存した生活をしている居住者が都心や駅の近くへの転居を行ったとしても,その居住者が自動車に依存した生活を単純に放棄するとは限らない.そこで本研究では,大都市圏衛星都市における調査データを用いて,転居前後の交通行動の変化の実態と,自動車利用削減のための意識変化を考慮した都市コンパクト化施策による交通環境負荷削減効果を明らかにすることを目的とする.分析の結果,クルマ利用削減のための意識啓発を継続的に行い,転居時にも住民がそれに配慮して選択しクルマ利用削減の努力をすることで,大きなCO2排出量削減が望めることが明らかになった.