土木学会論文集D3(土木計画学)
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特集(土木計画学における空間的応用一般均衡分析 -現在の到達点- )
  • 石倉 智樹, 小池 淳司
    2020 年 76 巻 2 号 p. 63-71
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     地域間および産業部門間の相互作用を,強固な経済理論を基礎として明示的にモデル化した空間的応用一般均衡(SCGE)モデルは,政策評価の包括的分析手法として土木計画学分野において精力的に発展を続けてきた.交通社会基盤政策や災害の経済被害の空間的波及への関心が高いこともあり,CGE分析を扱う経済学諸分野と比べて土木計画学では,地域間の輸送を介した空間的相互作用の表現方法を工夫する“Spatial”なモデル化に関する研究蓄積が多い.本稿では,『土木計画学における空間的応用一般均衡分析–現在の到達点–』の特集にあたり,土木計画学におけるSCGE研究発展の歴史と成果を振り返り,現在の研究フロンティアにおける各論文の位置付けと特徴を概説し,加えて今後も取り組みが必要な課題と研究展望についても言及する.

  • 瀬木 俊輔, 山崎 雅人, 石倉 智樹, 小池 淳司
    2020 年 76 巻 2 号 p. 72-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     応用一般均衡モデルは,交通インフラ整備による貨物輸送費削減の経済効果を分析する際の手段として広く利用されている.応用一般均衡モデルをこのような政策評価に利用する際には,入手可能なデータが限られる中で,貨物輸送費をどのようにモデル化すべきかが問題となる.本研究では,代表的な輸送費モデルとして,1) 氷塊輸送モデルと 2) 輸送部門モデルの2つを取り上げる.本研究は,各モデルの仮定が輸送費削減の経済効果の分析結果にもたらすバイアスの性質を,解析的な分析と数値的な分析を用いて明らかにする.さらに,バイアスを軽減するための,適切な輸送費のモデル化や分析手法について考察する.

  • 山崎 雅人, 瀬木 俊輔, 石倉 智樹, 小池 淳司
    2020 年 76 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     Iceberg型輸送費用モデルは,財の輸送抵抗を表現するモデルとして,経済学における理論分析や空間応用一般均衡(SCGE)分析において広く採用されている.ただしIceberg型輸送費用モデルは,輸送対象の財とその財の輸送サービスが同じ技術で生産されると仮定するため,この2つの生産活動は同一アクティビティとなる.多部門SCGEモデルではアクティビティ・ベースで部門分類を行うが,Iceberg型輸送費用モデルを採用した場合には,輸送対象の財とその財の輸送サービスを同一部門が生産する.ただしこの2つの生産活動の水準は区別できない.これは輸送抵抗の変化が輸送対象の財の生産量に与える影響を定量評価できないことを意味する.本稿はIceberg型輸送費用モデルを採用した多部門SCGEモデルの問題を定性的および定量的に明らかにする.

  • 高山 雄貴, 杉山 雅也
    2020 年 76 巻 2 号 p. 100-113
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     近年,均質な地理的空間下での体系的な理論解析1),2)により,新経済地理学の枠組みは,その数理構造に応じて類型化できること,モデル類型毎に輸送費用の低下が人口集積パターンに与える影響が定まることが示されている.本研究では,実空間を対象とした交通基盤整備の効果分析においても,モデル構造が分析結果に本質的な影響を与えることを明らかにする.そのために,既存の理論的知見で示されたモデル類型別に,交通基盤整備が人口分布に与える影響を調べる.そして,そのモデル類型の違いが,地域間輸送アクセスの改善効果を根本的に変化させる要因となることを示す.

  • 佐藤 啓輔, 小池 淳司
    2020 年 76 巻 2 号 p. 114-127
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本稿は,SCGEモデルにより計測した経済効果をもとに道路のストック効果を最大化するための施策検討を目的としている.具体的には,SCGEモデルを用いて過去に整備した道路のストック効果をポテンシャルとして計測し,鉱工業指数に基づき整理した経済変化の実測値と比較することで効果の発現状況を確認した上で,効果が発現している要因もしくは発現していない要因について企業実態調査を通して明らかにしストック効果を最大化させるための障壁および対応策を検討した.検討にあたり,地域の産業振興施策を担う商工労働部局と実施した「ストック効果最大化勉強会」での議論を通して企業支援実態等を踏まえた整理を行った.

和文論文
  • 吉枝 春樹, 小林 渉, 岩倉 成志
    2020 年 76 巻 2 号 p. 43-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/20
    ジャーナル 認証あり

     東京圏の都市鉄道は莫大な乗降者数による停車時間の伸長が,混雑率緩和のための運行頻度増のネックとなっている.これを極めてシンプルな着想で解決する.それは,現在の信号システムに比べ,列車間隔をより短く制御できる移動閉そくシステムで運行頻度を増やして,列車毎の乗降者数を減じ,停車時間を縮減して,大幅に混雑率を低減させるというものである.

     このため,2つのアプローチをおこなった.まず,運転理論に基づく分析で,最小運転間隔90秒の可能性を示す.次に,停車時間を規定する乗降行動と列車挙動のエージェントシミュレーションモデルを構築する.これを用いて停車時間と運行間隔の縮減を分析し,検討路線では移動閉そくと主要駅の改良により95秒間隔で運転でき,大規模な線増投資を行わずに,混雑率150%まで緩和できることを示した.

  • 佐藤 嘉洋, 円山 琢也
    2020 年 76 巻 2 号 p. 128-137
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     2016年熊本地震の被災地益城町で2017年7月に実施された被災者の今後の住まいに関する調査では,回収率向上のため,督促状の発送や無回答世帯への訪問など様々な取り組みがなされた.本研究ではこれらの取り組みの効果検証を意図して,回答時期による回答世帯の属性の違い,無回答世帯の実態,および無回答バイアスの有無や傾向を明らかにすることを目的とする.基礎属性分析の結果,世帯主の年齢が低い,中学生以下の子どもがいる,みなし仮設住宅で移転を考えている世帯に期間内回答が少ない傾向にあることが明らかとなった.また,災害公営住宅の需要に関して無回答バイアスの存在を確認し,シミュレーション結果から簡易な拡大推計法では需要を過大に推計することを確認した.

  • 長江 剛志, 水谷 大二郎
    2020 年 76 巻 2 号 p. 138-155
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,規模の経済性などによって複数の均衡解を持ち得る都市・交通均衡モデルに対し,対象とする系が直面する動学的不確実性を明示的に考慮した上で,その定常分布を定量的に分析するための方法を提案する.具体的には,まず,連続時間・連続状態の枠組下で,ポテンシャル・ゲームとなるような一般的な都市・交通均衡モデルに対し,系の動学がある確率過程に従うとき,その定常分布がBoltzmann型の解析解を持つことを明らかにする.次に,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて定常分布を定量的に推定するための方法を開発する.最後に,提案方法を複数の均衡解をもつ集積経済モデルに適用し,既存方法では推定が困難な,主体が十分に多いケースについても,提案手法によって定常分布が推定できることを明らかにする.

  • 田島 洋輔, 岡田 智秀
    2020 年 76 巻 2 号 p. 156-167
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     都内水上交通は,観光拠点間の移動機能に加えて,東京を代表する観光資源が眺められる等,非日常感が体験可能な観光事業である.しかし,こうした水上交通が10年以上に渡り継続した事例は極めて少ない.そこで本研究では,都内水上交通の持続的運営を目指して,都内水上交通事業者の航路変遷と事業形態の変化を明らかにした.その結果,第1期(1971-1995年)は「飲食クルーズ型」や「景観体験型」による東京を代表する景観が望める東京港周辺航路の確立,第2期(1996-2011年)は「歴史・文化体験型」による都内中小河川の周遊航路の誕生,第3期(2012-現在)は「移動周遊型」によるコースを自由に企画可能な貸切プランの形成という各期の特徴を捉えるとともに,それらを通じて水上交通事業を継続するための留意点を示した.

  • 古澤 悠吾, 溝上 章志, 森 俊勝, 八戸 龍馬
    2020 年 76 巻 2 号 p. 168-179
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,個人間カーシェアリングを自動運転車両で行う自動運転シェアリングサービスに対する手段転換とサービス提供に関する意志決定モデルの推定,およびそれらを組み込んだ自動運転シェアリングサービス運用シミュレータの開発を行った.このシミュレータを用いて,熊本都市圏を対象に自動運転カーシェアリングサービスが導入されたときの利用需要,車両価格や貸出価格が予約受付トリップ数やサービス提供者の収益に与えるインパクト,都心部における駐車時間の変化などについて分析を行うことを目的とする.その結果,全トリップの約15%がこのサービスに転換すること,サービス提供者は一日に約15,000円の収益を得ること,都心部の自動車1台あたりの駐車時間は半分程度まで減少することなどが明らかになった.

  • 城間 洋也, 福田 大輔
    2020 年 76 巻 2 号 p. 180-195
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     2016年4月より実施されている高速道路料金施策「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針」が高速道路のOD・経路交通需要に与えた短期的影響に関する実証分析を行い,その因果効果を推計した.まず,インターチェンジペア単位のETCログデータより得られる集計OD交通量に対し空間パネルデータ分析を適用し,料金変化の度合いに応じた因果効果が存在することが統計的に確認された.次に,パネル効果を考慮した集計型経路選択モデルを構築し,施策実施に伴って圏央道への交通量シフトが促進されたことが統計的に確認された.最後に,料金施策の因果効果を推計したところ,総交通需要に関してはほとんど影響を及ぼさなかったものの,首都高速を利用する都心通過交通が圏央道利用に大きくシフトした可能性が示唆された.

  • 水谷 大二郎, 上野 渉
    2020 年 76 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,階層的隠れマルコフ劣化モデルの状態推移確率が,局所離散時間軸の単位期間ごとにハザード率を近似することなく,解析的に導出可能であることを明らかにする.これにより,階層的隠れマルコフ劣化モデルのパラメータ推定において,i)パラメータ推定精度が向上するとともに,ii)完備化尤度関数と潜在変数を用いる必要が無くなりパラメータ推定の計算負荷が軽減される.これらの点を数値計算事例を通じて実証する.

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