2012 年 68 巻 5 号 p. I_155-I_166
本研究では,重要インフラの一つである港湾に着目し,港湾における防災投資行動の分析を行う.一般に防災投資は,私的動機に基づいた自発的なものである.しかし,ネットワーク全体からみれば,取引相手港への影響も考慮した防災投資を行うことが最適となり,その間には乖離が生じてしまう.また,この港湾ネットワークにて防災投資を行うときには相互補完性が生じ,防災投資に関する意思決定のナッシュ均衡解が複数存在することがある.本研究では,災害債権を導入することで,私的動機に基づく防災投資とネットワーク全体からみた最適な防災投資との間に生じる乖離を改善できることを示した.