2012 年 68 巻 5 号 p. I_63-I_74
海溝型地震の発生が切迫している現在,津波避難対策を検討することは,沿岸部地域にとって喫緊の課題である.地域の津波避難計画を策定するとともに,津波の危険性と避難の課題に対する地域住民の認識をより高めるためには,実践的な訓練に基づくことが求められる.本研究では,被災状況を考慮した実践的な津波避難訓練を計画・実施することによって見いだされる地域の現況の避難対策の課題,及び訓練参加者の危険性に関する認識の傾向を示し,実践的避難訓練の有効性を検討することを目的とする.本避難訓練では,道路や避難場所の一部は使用できないこと等を想定して実施し,訓練結果からは地域の避難対策の課題が導出された.また避難訓練後に実施した調査結果から,訓練の実施によって津波避難対策の必要性の認識が高まること等が示された.