2015 年 71 巻 5 号 p. I_991-I_1000
欧州を中心に注目されているIntelligent Speed Adaptation (ISA)は,我が国における交通静穏化のための抜本的なツールになる可能性を有している.本研究ではまず,ドライバーの主観的な安全性と利便性を考慮した走行速度選択モデルを構築し,車両走行実験データを用いたモデルパラメータの推定を行った.続いて,仮想的な生活道路区間を想定した上で,速度選択モデルおよび歩行者飛び出し事故危険性評価モデルに基づき,強制型ISAによるドライバーの負担および死亡事故減少便益を推計し,比較を行った.その結果,現況において,1km当りで2年に1件以上歩行者の飛び出しによる事故が生じている場合には,上限速度30km/hの強制型ISAによる便益がドライバーの総負担額を上回ることが示された.