抄録
本研究では,まず,非市場的相互作用により発生する近隣小売店の魅力度を内生的に表現した地区住民の買物目的地選択モデルを構築する.次に,広島市を対象とした実証分析を通じて,非市場的相互作用が買物目的地選択に及ぼす影響を定量的に示す.実証分析の結果,非市場的魅力度が買物目的地選択に有意な影響を及ぼすことが確認された.一方,対象地区においては,相互作用の影響がある閾値より大きい場合に発現する,「類似した居住者・交通環境にも関わらず,異なった均衡状態に至る」ことを示唆する複数均衡の存在は確認されず,非市場的魅力度の影響は,特定地区の買物目的地選択割合を劇的に変えるほどに大きいわけではないことが示唆された.