2020 年 75 巻 6 号 p. I_455-I_462
首都圏における朝ラッシュ時間帯の慢性的な混雑・遅延問題解決に向け,企業の始業時刻を平準化する TDM 施策が検討されている.本研究では,TDM 施策評価を念頭に企業間の戦略的な相互関係を考慮した始業時刻選択モデルを構築した.具体的には,ゲーム理論の枠組みを基本として,各地域に立地する企業体が 30 分ごとに区切った 7 つの時間帯を選択するものとし,地域間の空間的・時間的な経済的近接性を表現した集積変数を導入した.提案モデルは選択確率が入れ子構造となる内生性を有しているため,疑似最尤法に基づく構造推定手法を適用した.その結果,集積を示すパラメータは都心部よりも郊外部で大きく,都心部の始業時刻決定には他地域の始業時刻が影響ないが,郊外部では都心部の始業時刻に影響される非対称な相互作用の構造が明らかになった.