2020 年 75 巻 6 号 p. I_69-I_82
公共交通サービスなど社会資本の整備計画に対して表明される意見は「公共的判断」に基づいたものであることが要請されるが,そのためには対象となる地域住民の生活状況に関する十分かつ正確な情報が提示されている必要がある.著者らは「全地域住民の情報を何人か毎に分割し,意見表明者に分配する」手法(分権的調査手法)を提案しているが,その有用性について実証的には確かめられていなかった.そこで本研究では,地域住民の移動環境に関する情報と計画代替案を提示して計画に対するWTP を問うアンケート調査を本手法を用いて実施し,実証分析を行った.設定した条件の下ではWTP を3~7%の誤差精度をもって推定することができることなど,一定の範囲においてこの手法が有用であることが明らかとなった.