2022 年 77 巻 5 号 p. I_83-I_93
本研究では,地域通貨取引を消費者と店舗の2つの主体が相互に影響する両面市場と見なし,消費者と店舗に働く主体間/主体内相互作用を考慮した消費者換金行動モデル,店舗加盟行動モデルを構築し,広島県の4つの市を対象とした実証分析を通じて,それぞれの相互作用が消費者の換金行動と店舗の加盟行動に及ぼす影響を定量的に示す.実証分析の結果,主体間相互作用が消費者の換金行動,店舗の加盟行動の両方に有意な影響を及ぼすこと,消費者に正の主体内相互作用の存在が確認されたこと,消費者の主体内相互作用の強度は消費者自身の地域愛着の程度に依存することが示唆された.また,地域通貨事業の効率性を評価するシミュレーションを行った結果,運営主体は店舗へ一定額の補助金を出すことで地域通貨事業の効率性を改善できることが示唆された.