2022 年 77 巻 5 号 p. I_961-I_973
本研究は,熊本県荒尾市で実施された高齢者を対象としたモビリティ・マネジメント(以下,MM)で用いられたフルセット TFP の有効性を評価することが目的である.従来,トラベル・フィードバック・プログラム(以下,TFP)の有効性の評価には定性的,または定量的であっても集計的な方法で行われてきたが,ここでは行動モデルを用いて定量的に評価を行う.このとき,ステップが進むにつれて TFP からの離脱者が発生することによって生じる消耗バイアスへの対応が必要である.そこで,パネルデータの分析に用いられる消耗バイアス修正法を TFP の次のステップへの継続モデルの推定に適用し,そこから得られた選択性バイアスを考慮した公共交通への転換モデルを推定することにより,フルセット TFP の各段階で有効な変数や提供情報を明らかにする.