抄録
多くの下水道構造物において,コンクリートの硫酸侵食による劣化が社会的な問題となっている.一般に,普通コンクリートでは,硫酸環境のpHが低い場合には,硫酸濃度が同じであれば,高強度なものほど硫酸に対する抵抗性が低いといわれている.これに対して,本論文では,高炉スラグを細骨材として用いれば,硫酸と接するコンクリート表面に剥がれ落ちにくい密実な二水石こうの膜が形成されること,また,密実な二水石こうの膜によってコンクリート内への硫酸の侵入が抑制されることで,コンクリートの耐硫酸性が改善されるために,高強度なものほど硫酸に対する抵抗性が高くなることを示す.さらに,硫酸環境のpHが低い場合には,コンクリートの硫酸による侵食深さと,浸漬期間と硫酸濃度の積との間には,線形関係が成り立つことを示す.