抄録
これまで,大水深の矢板式岸壁には引張強度490N/mm2級の剛性の高い鋼管矢板が用いられてきた.しかし,矢板壁の剛性が上がると最大曲げモーメントが大きくなる特性があり,応力が規定値を超えると断面を大きくするため,さらに最大曲げモーメントが大きくなるという悪循環が続くことがある.高強度鋼管矢板(引張強度570N/mm2級)は,この現象を回避する有効な手法と考えられるため,現行の港湾基準に対応した設計法を提案した.高強度鋼管矢板の適用で,矢板壁の剛性が低下したことが耐震性に悪影響を与えないか地震応答解析で検討したところ,従来材(引張強度490N/mm2級)と同等の残留変形量(岸壁天端)になることが確認できた.その理由は,控え工の変形特性が支配的であるためであった.