土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
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海洋開発論文集 Vol.38(特集)
  • Lianhui WU, Tsuyoshi IKEYA, Daisuke INAZU, Akio OKAYASU, Yukinari FUKU ...
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     Crew transfer vessels (CTVs) are the main personnel transport vehicle in offshore wind farm businesses. Accurate evaluation of the accessibility to the offshore wind turbines (OWTs) by CTVs is very important to ensure the safety of personnel and to improve work efficiency. This study developed an artificial neural network (NN) model to evaluate the accessibility based on real experimental data of CTVs. Sensitivity analysis was carried out to evaluate the effect of wave and wind parameters on the determination of the accessibility of CTVs. It is found that NN models show great potential for predicting the accessibility of CTVs. Wave condition plays a dominant role in the success of transfer by using CTVs. Using wind conditions as additional input parameters for NN models can slightly increase the classification accuracy. The classification error is believed due to the insufficiency of the objectivity of the dataset.

  • 大井 邦昭, 三上 信雄, 米山 正樹, 完山 暢, 岩本 典丈, 古殿 太郎, 坂本 葉月, 中瀬 聡
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     漁港施設水中部の点検は,潜水目視調査が主体のため,近年の潜水士不足や高齢化を背景に,安全性や労力等作業環境の改善が求められている.水中3Dスキャナ等の音響機器を活用した「センシング技術」により効率化が進められているが,コンクリートのひび割れ,小規模欠損,鋼材の開孔や発錆等の検出は困難である.そこで,近年,小型化・高機能化・低価格化が進んでいる水中ドローンを用いて,予防保全対策に重要となる初期段階を含む「小規模変状の検出」に対する適用性と効率化の効果検証を実施した.潜水目視調査記録が入手できる漁港において現地試験を行った結果,水中ドローンは潜水目視調査と同程度に変状を抽出でき,かつ変状寸法計測等を含む「詳細調査」に相当する作業工程も実施可能であることが明らかになった.また,水中ドローンで撮影した動画をもとに作成した「結合画像」は変状位置の特定や変状周囲の状況把握等に利用でき,潜水目視調査の大部分の作業工程を代替できることが確認された.

  • 喜夛 司, 田中 敏成, 鈴木 博善
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     港湾構造物の水中部の点検では,水中ロボットによる点検実施が要望されているが,水中のロボットの位置がわからないため操縦が困難である.そこで本研究では車輪付きの水中ロボットの自動化された移動手法を検討した.作業は,災害時などに要望される構造物の外観形状の調査を想定した.ロボットにガイドアームを設置し,先端に車輪を取り付けた.スラスタで車輪を壁に押し付けて一定距離を保持しながら移動し,写真撮影を行い変状の確認を行うため,自動操縦機能を付与した.性能確認のため水槽で作業模擬試験を実施し,実用性検討のため音響距離計を用いた手法と比較した.その結果,車輪方式の方が,目標とした直線的な経路に近い軌跡で移動したことを確認した.また,壁面の段差の乗り越えの検討を行い,段差に引っかかった際の運用方法を確認した.

  • 中泉 昌光, 林 浩志
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     我が国では,労働生産性向上等働き方改革や資源管理等を核とした水産政策が始まっている.こうした中で,漁港・市場の管理運営の在り方が求められている.そこで本研究では,厳しい資源状況の中,20年以上前から販売業務の電子化を行っている欧州漁港・市場について,ICT活用の現状とその効果を把握し,我が国における課題を明らかにすることを目的としたものである.その結果,販売業務の電子化等ICT活用により,生産性向上や付加価値化の効果があることや漁港・市場が資源管理の拠点としての機能を有することがわかった.このことから,我が国では,販売業務の電子化の導入・普及が喫緊の課題である.また,オンライン販売の導入や漁港・市場からの情報公開・提供やワンストップ・サービスにおける課題も明らかになった.

  • 鶴江 智彦, 西村 博一, 大熊 康平, 伊藤 敏朗
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     浅海域において,藻場が衰退・消失状態となる「磯焼け」が大きな問題となっている.本研究では,磯焼けの複数要因に対応するため,着定基質の素材と形状を工夫し,実海域において検証実験を行った.また,試験ブロックに繁茂した海藻類のCO2吸収ポテンシャルを推算した.この結果,アミノ酸を混和した方形状の試験ブロックでは,既設のブロックや大割石よりもホソメコンブをはじめとする海藻類が繁茂し,アミノ酸を混和したプレート状の試験ブロックでは,海藻類の継続的な繁茂と多様な生物相の形成が確認された.CO2吸収ポテンシャルについては,方形状の試験ブロックでは7.995t-CO2/ha/年,プレート状の試験ブロックでは,最大1.125t-CO2/ha/年と推算された.今後は,継続調査によるデータの追加補正や特性の異なる技術を単独あるいは組み合わせた場合の効果検証が必要である.

  • 山本 貴史, 玉置 哲也, 岡崎 慎一郎, 吉田 秀典, 末永 慶寛
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     親潮と黒潮が衝突する潮目に近い岩手県沿岸海域は,高い漁獲量を誇る貴重な場所となっている.特にウニ(Mesocentrotus nudus)や昆布(Saccharina japonica)の生産が盛んで,昆布は藻場を形成するとともに生物多様性の維持と海洋環境の保全に重要な役割を果たし,浅瀬の生態系を支えている.しかし,2011年東日本大震災による海底の地盤沈下は,漁場に甚大な被害を与えたのみならず磯焼けが継続し,漁獲量は年々減少傾向にある.さらに,漁業従事者の高齢化と減少も漁業生産性に深刻な問題を呈している.

     本研究では,ウニによる昆布の初期食害抑制技術の開発と農林水産省が定める費用対効果と昆布床を造成することによるウニと昆布の共生技術の効果を検証した.また,高齢の漁業者にも安全に操業可能な漁場の創出とAIによるウニの生息密度に対する昆布の浮上式増殖基質の効率的な投入方法も提案する.

  • 今村 正裕, 日恵井 佳子, 小林 卓也, 井野場 誠治
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     火力発電所から発生する石炭灰と水産系廃棄物である貝殻砕粉を混合したブロック(FSB)を藻礁として活用するため,室内実験による着生実験と実海域へのブロック敷設試験の実施から海藻類への生物親和性を検証した.室内実験によるFSB試験片上のアカモク成長速度は,コンクリートや天然石と比較し有意な差はなく同程度であった.また,小型ブロックを実海域へ敷設し,ブロック表面への海藻着生量の変化を観察した.敷設から10か月後のブロック表面単位面積あたりの海藻着生量は,同形状のコンクリートブロックと同等かそれ以上であり,実海域でもFSBへの安定した着生が確認できた.なお,室内実験と実海域敷設試験で回収した藻体の重金属量を測定した結果,FSBに着生していた海藻の重金属含有量はその他試験体と比較し有意な差は見られず,天然海藻のそれと同程度かそれ以下であるこが確認できた.

  • 行冨 初, 仁木 将人, 石川 智士, 矢野 ほのか, 三木 秀明, 矢吹 晴一郎
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     干潟は,水質の浄化や生物の生息場など,多くの公益的機能を有しており,近年ではブルーカーボン創出の場などの新たな役割も期待されている.失われた干潟や浅場の創造には基盤材としての砂が必要となるが,天然砂の利用は新たな環境破壊を引き起こす可能性が考えられるため,代替材の開発が求められる.そこで本研究では,一般廃棄物の溶融過程で生成される溶融スラグを使った水槽による比較実験と,溶融スラグを使用した実海域での人工干潟造成実験を実施し,溶融スラグの海域への影響を明らかにすることを試みた.研究の結果,pHやT-N等の水質や飼育したアサリへの著しい影響は確認されず,また全期間を通じて人工干潟に底生生物が着底していたことから,溶融スラグの干潟の基盤材としての利用可能性が示された.

海洋開発論文集 Vol.38
  • 宇多 高明, 藤城 信幸, 伊達 文美
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     伊良湖岬周辺での漂砂量の長期的変化について考察した.伊良湖岬の北東側に形成されている西ノ浜を構成する海岸低地の総面積に砂礫層の層厚27mを乗じ,この低地が縄文海進極相期以降の経過年6000年で形成されたとし,経過年で除すと,砂礫の堆積速度は7.4万m3/yrとなり,伊良湖岬を通過した沿岸漂砂量は7.4万m3/yrと推定された.一方,伊良湖港周辺の1956年当時の深浅図から読み取った波による地形変化の限界水深6mを与えて沿岸漂砂量を算定したところ,漂砂量は6.9万m3/yrとなり,地質学的時間スケールと工学的時間スケールでの沿岸漂砂量がほぼ一致することが分かった.

  • 宇多 高明, 中田 祐希, 大中 晋, 森 智弘, 古池 鋼
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     Philippineは多数の島々と複雑な湾入海岸線を有するために,波の入射角が著しく大きくなり,海岸線ではHigh-angle wave instabilityによる海浜変形が起こり得る.このような海岸線にあっては,通常の海岸保全工法で用いられている護岸や突堤を用いても汀線維持が難しい.PhilippineのPanai島南部沿岸はこのような特徴を有する.そこで,この沿岸を例として衛星画像の分析と現地調査により侵食実態を調べた.また,エネルギー平衡方程式法により波浪場を算出し,地形変化機構について考察した.この結果,この沿岸では入射角が45°以上と大く斜め入射する場所があり,そこで沿岸漂砂の不連続性が起こるため顕著な侵食が起きていることが分かった.

  • 中村 友昭, 内藤 龍之介, 趙 容桓, 水谷 法美, 山野 貴司
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     杭基礎周辺の局所洗掘現象に波浪場と地形変化の相互作用を解析できる数値計算モデルFS3Mを適用し,漂砂現象に関わる3つのパラメータが局所洗掘に与える影響を検討した.また,計算結果を機械学習モデルのXGBoostとLightGBMを使って学習させ,パラメータの影響を機械学習の観点からも評価した.その結果,最終洗掘深への寄与は底質の巻き上げ関数の係数Cpが最も大きく,Cpの増加とともに最終洗掘深も大きくなる傾向があること,摩擦速度の計算に用いる接線方向流速の移動床表面からの高さzvelと移動床表面近傍の鉛直方向の格子幅Δzsurfの最終洗掘深への寄与は小さいこと,zvel/Δzsurf = 3~4 にかけて zvel/Δzsurfの増加とともに最終洗掘深も大きくなる傾向があること,Δzsurfが最終洗掘深に与える明確な傾向はないことを確認した.また,以上の結果に基づいてパラメータ値の決定方法を提案した.

  • 宇多 高明, 野志 保仁, 高橋 紘一朗, 中田 祐希, 伊達 文美
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     宮古島にある与那覇前浜ビーチは来間島背後に形成された尖角州であり,その先端部を除けば長らく安定した形状を保ち,多くの人々により利用されてきた.しかしこの海浜では,近年北部から侵食が進み,北端部背後に立地するホテルの施設が侵食により破壊されるとともに,利用空間である砂浜が消失し,海浜利用上大きな障害が出ている.本研究では,この海浜を対象として,衛星画像による汀線変化解析および現地調査を行った.また,UAVにより汀線状況を撮影し,既往の侵食状況写真や現地写真と合わせて侵食実態を明らかにした.

  • 宇多 高明, 大中 晋, 市川 真吾, 森 智弘
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     PhilippineのPanai島北東部に流入するAklan川の河口付近の侵食について調べた.この付近では2014年に現地調査を行い,衛星画像も利用しつつ海浜変形について考察したが,5年後の2019年には再度の現地調査を行った.衛星画像を基に海岸侵食状況を調べるとともに,海岸線の南東端での砂嘴の発達と変形状況ついても調べた.この沿岸では,Aklan川河口でのbarrier islandの発達にともない,河川からの供給土砂の沿岸方向の移動が阻止されたことなどにより侵食が進んできたが,侵食域を局所的に護岸で防護したため下手方向へと侵食域が広がっている.さらに下手端にある砂嘴でも砂の供給不足により著しい変形が起きていることが明らかになった.

  • 梶川 勇樹, 黒岩 正光, 武田 将英, Ain Natasha Balqis
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,洋上風力発電施設の基部における洗掘対策に資するため,波・流れ共存場での円柱周辺の局所洗掘現象を高精度に予測できる数値解析モデルの開発を目的とし,三次元モデルの開発と水理模型実験への適用を行った.開発した数値モデルの造波性能の検証から,本モデルは波単独および波・流れ共存場における水位変動を良好に再現できることを示した.また,円柱周辺の流況に関し,対象とした実験条件下では波・流れ共存場で極めて複雑な三次元流況が発生していた.特に,円柱設置位置を波の谷が通過する際には,左右非対称な後流渦とともに多数の小規模な鉛直渦が発生していたことを明らかにした.最後に,洗掘現象の比較から,円柱直背後を除けば,本数値モデルにより波・流れ共存場におけるその局所洗掘現象を定性的には再現できることを示した.

  • 宇多 高明, 大久保 克紀, 三波 俊郎, 大木 康弘
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     1964年以降,半世紀間にわたる人工構造物の建設に伴う海岸線の変化について,太平洋に東面し,現在は日立港や常陸那珂港が立地する,茨城県の日立港から磯崎漁港に至る長さ約12.5kmの海岸線を対象として実態論的に研究を進めた.調査区域北部の那珂海岸では,日立港の沖防波堤と常陸那珂港の東防波堤による回折効果により汀線変化が起こり,侵食域は護岸と消波工により完全に覆われた海岸となった.また,阿字ヶ浦海岸では常陸那珂港の東防波堤による回折効果により汀線の回転が起きてきていることが明らかになった.これらを基に,将来の海岸保全手法の在り方について提案した.

  • 宇多 高明, 星上 幸良, 和知 久仁彦, 大木 康弘, 押見 青幹
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     阿字ヶ浦海岸におけるサンドリサイクルによる砂礫の掘削と投入後,養浜盛り土の変形状況を調べた.養浜直後の2021年7月16日と養浜から3か月経過後の2021年10月15日にはUAV映像を取得し,海浜の3次元測量を行った.併せて養浜前後の海浜状況の変化について現地調査を行った.サンドリサイクルによる投入土砂はごく短時間汀線に留まるのみで,3か月後には効果が全く失われた.この意味より,養浜砂が安定的に投入箇所に安定的に留まることが可能な方法を採用した後,養浜を行う方法に改良することが必要である.

  • 片野 明良, 清水 利浩, 千田 奈津子, 眞井 里菜, 有川 太郎
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     新潟港海岸日和山浜地区にて,飛砂が発生する冬季(12月中旬から3月上旬)に,TLS測量とUAV測量による海浜地形測量を4年に亘って実施した.精度の高いTLS測量は信頼し得る土量計算を可能にした.砂浜地形の土砂収支解析から,遡上帯からの飛砂発生の事実の確認,及びその発生量の推定ができた.1冬季期間の遡上帯からの飛砂発生量は概略1.6~2.5m3/mであった.海浜のある一定の範囲(第2区画)にて,海浜陸端に設置してある堆砂垣周辺の堆積量から推定された飛砂量は,2016年度4.6m3/m,2017年7.5m3/m得ている.2016年度2.27m3/m / 4.6m3/m=0.49,2017年度3.66m3/m / 7.5m3/m=0.49となり概略50%程度が遡上帯から発生していることになる.遡上帯の幅は20m~40m程度であった.地形データから判読された最大遡上高は改良仮想勾配法により算定される値と概略一致した.

  • 伊藤 秀, 片山 大地, 大泉 洸太, 石橋 邦彦, 中村 亮太, 加藤 茂
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,令和3年度台風9号通過前後における新潟海岸の離岸堤背後の地形変化を対象として,現地調査を実施し,数値計算モデルを用いて分析した.現地調査データは,UAVとRTK-GNSSを用いた空中写真測量とGPS魚群探知機を用いた深浅測量により取得した.次に,XBeachを用いて離岸堤背後の海浜変形の数値計算を行った.数値計算結果では汀線より陸側で侵食,海側で堆積が発生していて,測量結果とよく符合していた.また,測線毎の地形変化を定量的に分析するためにBSSを用いて分析したところ,潮位データに観測潮位を用いたケースのほうが天文潮位を用いたケースよりもBSSが向上した.また,離岸堤背後に形成された舌状砂州を数値計算で再現できていた.これは,離岸堤付近における波浪場,海浜流の影響によるものであることが数値計算の算定結果より確認された.

  • 田方 俊輔, 泉 典洋
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     堤防前面における高波浪時の地形変化を詳細に理解するため,静岡県駿河海岸において複数台の観測機器により観測した令和元年東日本台風時の局所的に三次元的な挙動を示す地形変化について検討した.高波浪の継続に伴い,観測地点の地形勾配は岸沖方向で急勾配化し,最も波が高くなる時間帯で一気に緩勾配化することが確認された.この時の沖波と地形勾配の関係から,既往の平衡勾配の経験式と最終的に形成された地形勾配が一致することを確認した.また,沿岸方向の地形変化では,高波浪の初期では一様に砂面が低下するが,波高が大きくなる時間帯では沿岸方向に勾配をもって砂面低下が進行することを確認した.この際の時空間画像解析から,高波浪による海岸植生の流出をきっかけに沿岸方向の流れが卓越し,三次元的な地形変化が進行したことを示した.

  • 本杉 蓮, 菊 雅美, 若松 果穂
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,水理模型実験中に時々刻々と変化する礫浜を計測するために,3次元地形計測システムを構築した.同時撮影した複数枚の画像にSfM/MVS技術を適用することで,礫浜のDSMとオルソモザイクの作成が可能となった.さらに,構築した計測手法を用いて,礫浜に設置された消波ブロックが地形変化に与える影響を検討した.その結果,礫浜上に消波ブロックを設置すると,地形が平衡化するまでの所要時間は長くなるとともに,礫がより陸側に堆積する可能性が示唆された.水理模型実験で生じる3次元的な地形変化の計測に対し,3次元地形計測システムの有用性は高いと考えられる.

  • 梁 順普, 佐々 真志, 工代 健太, 村田 一城, 小林 千紘
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     筆者らは,護岸・岸壁等の港湾施設における吸い出し防止策として,裏込石と裏埋砂の間に二層構造のフィルター層を設ける手法に着目し,その実用性を総合的に検討してきている.本研究では,臨海部の多様な外力と裏埋砂の粒子形状を考慮した吸い出し抑止対策技術の高度化を目的として,貝殻片等を多く含有する海砂を用い,地震,潮汐,流れ,風波,降雨,越波等を受けた際の吸い出し抑止性能について,一連の系統的な要素試験と大型吸い出し可視化実験を通じて詳細に検討した.その結果,円磨度が低いいびつな形状を持つ砂を裏埋砂として用いる場合,地震,潮汐,流れ,風波,降雨,越波等の多様な動的環境外力作用下でも,砕石フィルター材の均等係数が2.5以上,中央粒径比が 25 以下の条件において,高い吸い出し抑止効果が得られることが明らかとなった.

  • Kullachart BORRIBUNNANGKUN, Takayuki SUZUKI, Martin MÄLL, Hiroto HIGA
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     In nearshore morphodynamic modeling, the simulation of offshore-directed mean current or so-called undertow is necessary for sediment transport as a significant driver. XBeach model is wildly used in predicting storm impacts on natural coasts, yet in regard to morphodynamic predictions, the undertow simulations have been rarely discussed. Recent improvements in the XBeach undertow prediction have been made by modifying the wave roller model. However, despite the improvements for high-wave conditions, the XBeach still performs poorly in predicting undertow under low-wave conditions, where the water depth is a dominant factor controlling undertow current instead of wave mass flux. To improve the XBeach undertow prediction, this paper proposes a modification based on the water depth effect. XBeach performance was tested by comparing two-dimensional simulations with the field observations during low-wave period conditions at Hasaki coast, Japan.

     Calibration of model coefficients yielded good results for waves, though low accuracy for the simulated undertow. Here, the individual contributions of Stokes drift and Lagrangian velocity (wave forcing term) were respectively modified by including a water depth coefficient. This adjustment caused the undertow’s water depth to be considered from under the wave trough level. The temporal undertow comparisons show a small improvement in the whole period and the accuracy correlates with tidal elevation. When the comparisons of undertow spatial distribution were considered at the different water levels, the undertow results were significantly improved especially at low tide, with an increase in accuracy from bad to fair.

  • 泉 琢弥, 鷲見 浩一, 小林 信久, 中村 倫明, 小田 晃, 落合 実
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
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     本研究は,Cross-Shore Numerical Modelによる海底の縦断面形状の算定と深浅測量の結果に基づいて,千里浜海岸の漂砂動向を考究するものである.年に1回の頻度で実施されている深浅測量による同海岸の縦断形状の特徴は,2段と3段の多段砂州が形成されることにあり,時間の経過に伴い砂州は出現し消失する.海底の縦断形状は,水深7m以浅において有意な変化が発生し,活発な漂砂移動は同水深域で生じていると考えられる.2007年の深浅測量値を初期条件としてCross-Shore Numerical Modelにより算定した1年後の縦断地形は,同時期の深線測量値と概ね一致し,砂州の形状変化を再現できた.沿岸漂砂は,滝崎から金沢港へと向かう南方向であり,砂州の頂部と入射波の砕波後の汀線付近の領域で顕著となる傾向を示した.

  • 和田 京果, 加藤 茂, 豊田 将也, 朝倉 稜翔
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
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     干潟上に広く存在する砂漣は,その大きさがセンチメートル・スケールであり,干潟の空間スケールに対して非常に小さい.しかし,土砂移動を伴う形状変化や移動は,沿岸域全体の土砂輸送や地形変化に少なからず影響を与えるため,砂漣の変形・移動過程を把握することは非常に重要である.本研究では,波や流れの作用を受ける水中での砂漣を連続撮影し,干潟の海象条件と砂漣の形状を照合することで,砂漣の移動特性を把握した.その結果,砂漣の移動は水深の小さい時間帯に限られており,移動に伴って砂漣の形状が非対称となり,先鋭化することが明らかとなった.砂漣の移動に関しては,瞬間的に発生する強い流れが,砂漣の移動に大きく影響している可能性が示された.また,現地の波浪条件や水深,底質粒径から,砂漣の移動の有無を推定できる可能性が示された.

  • 塚本 高文, 琴浦 毅
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
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     ナローマルチビーム測量(以下,NMBと略記)は水中部を可視化できる技術として,ICT活用工事へと実用化が進み,ICT浚渫工の出来形検査,ICT基礎工の数量算出で実用化されているものの,捨石マウンドの出来形検査は実現していない.これは,捨石マウンドの複雑な形状と管理基準の要求精度の高さや,NMBの点群特性に起因するところが大きい.そこで本研究では,捨石マウンドのNMB点群特性を踏まえた出来形検査手法の構築を検討した.

     その結果,捨石マウンドを対象としたNMB測量の取得点群に及ぼす影響は,捨石マウンドの凹凸が支配的であることが明らかになり,捨石マウンドの出来形管理基準の管理項目である天端高,法面高,延長,幅の評価を可能とする評価値を点群から算出する手法を構築した.これにより捨石マウンド全体の面的評価を可能とした.

  • 小川 雅史, 辰巳 大介
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     国土交通省港湾局では,港湾工事において建設現場における生産性の向上等を目指すi-Constructionを推進するための取組みを進めてきた.港湾分野で先行的に進められて来たICT浚渫工では,マルチビーム測深を活用するが課題もある.マルチビーム測深は,従来方式に比べ膨大な点群データを短時間に取得可能であるが,気泡等による音波の反射等により実際の海底の水深と異なる値であるノイズも計測される.ノイズ処理の大半は,時間と手間を要する手動処理であり生産性向上の隘路となっている.

     そのため,ノイズを効率的に処理する深層学習モデルを開発し,実際のICT浚渫工におけるマルチビーム測深データを対象に適用性を検証した.検証の結果,深層学習モデルによるノイズ処理は一定の精度が達成されるとともに,主に手動処理による従来手法に比べ時間短縮も期待されるものとなった.

  • 田中 裕一, 浜谷 伸介, 野中 宗一郎, 中川 雅夫
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     カルシア改質土は,浚渫土とカルシア改質材を混合した材料であり,干潟・浅場の造成材,埋立材,深掘跡の埋戻材,護岸の裏込材等として広く使用されている.また,カルシア改質材は鉄製造過程の副産物のため,セメント固化処理土と比較してカルシア改質土のCO2排出量は小さい特徴がある.一方で,カーボンニュートラル社会を目指す上で,カルシア改質土の施工時のCO2排出量を低減することも重要となる.

     そこで,カルシア改質土の施工条件を想定し,CO2排出量を試算した結果,カルシアバケットの使用によりバックホウ混合時のCO2排出量は40%程度抑制された.また,カルシア落下混合船を使用しカルシア改質土をトレミー投入することより,施工時全体のCO2排出量をバックホウ混合-グラブ投入と比較して30%以上CO2排出量を削減することが可能であった.

  • 西 広人, 琴浦 毅
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     消波ブロックは施工延長が長大であることやブロック直上での作業が安全管理上困難なことから,「ICT機器を用いた測量マニュアル(ブロック据付工編)」も最新の研究を踏まえて更新されるなど,UAV測量の活用が期待されている.しかし,消波ブロックの取得点群データの評価・活用方法について検討した事例は少なく,活用にあたって十分な知見が不足している.そこで本研究では,模型や現地で取得したデータを用いて消波ブロックの点群特性を把握し,活用に向けた評価手法の検討を行った.

     その結果,点群データを用いた外観での確認手法の適用性と設置向きにおける消波ブロックの点群特性を踏まえた面的評価検討を行い,最高値を採用することで面的評価が可能であることが確認できた.施工延長に長大な消波ブロックの出来形,現状把握に有効な手段であり,今後の効率的な管理への適用が期待できる.

  • 酒井 大樹, 小塚 海奈里, 金澤 剛, 増田 和輝
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     近年では,捨石均しで作業の効率性や潜水士の人手不足が問題視されており,対策の一つとして,重錘式捨石均しが採用されている.しかし,重錘落下時に発生する流れによって,比較的小さな捨石が飛散し,作業効率の低下が問題となっている.重錘落下時に発生する流速評価は重要であるため,本研究では重錘落下時に捨石マウンド上で発生する流れに対してDualSPHysicsの適用性を検討した.重錘の自由落下時の時系列変化は実験結果を良好に再現することができた.重錘落下によって発生する流れについては,粒子法における水の粒子サイズdp = 3mmで良好な再現性を確保できた.また,重錘中心直下においてはほとんど流れが発生しないことがわかり,最大流速が発生する位置は重錘底板の側面付近であることがわかった.さらに,落下高さhc = 300mmに比べてhc = 50mmでは発生する最大水平流速が約50%に低減できた.

  • 湯地 輝, 審良 善和, 若杉 三紀夫, 大山 晋太郎
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,港湾構造物の下部工鋼材部位に適用されるモルタル被覆工法と電気防食工法に着目し,モルタル抵抗を低減させ海水中の電気防食の電流を被覆部まで流入させることによる,長期耐久性を備えた電気防食併用型被覆工法の開発を行った.モルタル中の細骨材にカーボンを用いた導電性モルタルとし,導電性モルタル中の鋼材の腐食・防食特性を把握し,実海洋環境で暴露実験を行うことで被覆工法としての適用可否および適用範囲の検討を実施した.円柱供試体に鉄筋を埋設した室内試験より,水中環境では1mA/m2,乾燥環境では100mA/m2の防食電流で防食可能であることを確認した.導電性モルタルを被覆した鋼材の暴露3.5年経過後の解体調査では,L.W.L. +235cm深の範囲において十分な防食性能を確認しており,被覆工法として適用可能であることを確認した.

  • 森 拓人, 水谷 崇亮, 西村 真二
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     大水深の桟橋や着床式洋上風力発電施設の基礎杭の施工においては,作業性や施工性を維持しつつ,精度のよい杭の施工管理を行うことが重要な課題である.本研究はバイブロハンマ工法による基礎杭の施工において貫入中の杭が受ける地盤抵抗を直接測定する技術の開発を目的とした.杭基礎の支持力を調べる動的載荷試験方法で用いられる解釈法である1質点系モデル法やCASE法をバイブロハンマ工法に適用し,得られた地盤抵抗~変位量関係曲線から地盤抵抗を周面と先端に分離する方法を検討した.新潟空港の進入灯基礎の更新工事の現場において実杭施工時の測定を実施しその有効性を検証した.実杭の測定ではバイブロハンマ本体に測定用鋼管(以下ヤットコ)を装着し,ヤットコにひずみゲージを取り付ける方法を用い,杭体にひずみゲージを直接取り付ける場合と計測結果を比較検証した.得られた地盤抵抗はN値の深度方向の変化傾向と定性的に対応する変化傾向を示すことが確認された.

  • 山本 浩二, 岸村 直登, 鈴木 高二朗, 椛澤 竜生, 岸村 尚, 藤城 裕也, 石金 達也
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     ケーソン式護岸や岸壁等の港湾施設では,裏込石と埋立土砂の間に敷設される防砂シートは,埋立完了までに破損する事例が多く,吸い出しの要因となっている.その主な破損要因は,①波や風でのばたつき揺動による裏込石との接触摩耗,②波や潮位差による防砂シートの浮き上がり後の沈降等による引き込まれ(異常緊張),③埋立土砂投入による防砂シートの引き込まれ(異常緊張)があげられる.

     そこで本研究では,防砂シート敷設後の浮き上がり沈降や埋立土砂投入による引き込みが起因となる破損に対し,補助材による引き込み対策「防砂シート引込軽減工法」について,要素試験や荷重確認実験ならびに実証実験を実施し,引き込み抑制効果を明らかにした.

  • 宇多 高明, 内藤 慎也, 八木 裕子
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     遠州灘に面した菊川の河口周辺に位置する測線No. 102,88, 86, 84において,2015~2020年に取得された縦断測量データを用いて陸向き飛砂量を算定した.また,2021年4月20日には菊川河口周辺の現地調査を行い,海浜砂のサンプリングを行った.この結果,各測線ごとの陸向き飛砂量は,2.7 m3/m/yr(No. 102),3.4 m3/m/yr(No. 88),3.9 m3/m/yr(No. 86),8.1 m3/m/yr(No. 84)と求められた(平均値:4.5 m3/m/yr).この値は,既往研究において地質学的時間スケールの地形形成から推定した陸向き飛砂量3 m3/m/yrと同じオーダーであり,長期間の地形形成から推定した飛砂量と,縦断形変化から推定した飛砂量がオーダー的に一致することが分かった.

  • 升谷 武尊, 辻本 剛三, 金 洙列
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     遡上域の底質移動にコンストラクタル法則を適用して得られた粒径と前浜勾配の動的関係を用いて,サンゴ礁海浜の特性を比較した.

     粒径と形状の関係ではサンゴ礁海浜では粒径の減少に伴いRcが増加する負の相関を,砂浜海浜で反対の正の相関が見られた.底質粒径と前浜勾配の解析の結果,海浜のタイプが反射型,逸散型に変化した場合でサンゴ礁海浜と砂浜海浜で粒径や前浜勾配の変化量に違いが見られ,その違いは海浜の粒度分布等に起因することがわかった.

  • 宇多 高明, 佐々木 常光, 大谷 靖郎, 三波 俊郎
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     空中写真に基づく汀線変化解析により西湘海岸の侵食状況について調べた.この結果によると,近年では森戸川河口東側の国府津・前川地先と二宮IC~葛川河口間で侵食が著しい.汀線変化特性より,国府津・前川地区での侵食は森戸川河口沖の海底谷に土砂が落ち込んだためと推定された.一方,二宮ICの東側隣接部では,東向きの沿岸漂砂により侵食域が次第に東側へと波及している.浜幅の変化から概算した 1973~2020年での西湘海岸全体での総侵食量は286万m3と算定され,この総量が海底谷への流出によると仮定すると,海底谷への流出土砂量は6.1万 m3/yrと推定された.

  • 宇多 高明
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     衛星画像を基に,沖縄北部の大宜味海岸のポケットビーチにおける汀線の方向角の変化を調べた.これによると,2009年以降,卓越波の入射方向がN33°WからN57°Wへと左回りに24°回転し,これに応じて汀線のrotationが起きたことが分かった.また,大宜味海岸では,凸状の海岸線に沿って離岸堤群が設置されていたが,その中央部で海岸線の走行方向が56°も変わっていたため,海岸線の変曲点に設置されていた3号堤付近で入射波向の変化に応じた東向きの沿岸漂砂が発生し,これが離岸堤周辺での著しい地形変化をもたらしたことが分かった.

  • 山野 貴司, 古畑 亜佑美
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     着床式洋上風力発電基礎のうち,構造物としての製作コストが最も安価なモノパイルは,欧州などでは多く採用されている.我が国においても採用実績は多数あるものの,現地条件によってはモノパイルが適さない場合もある.そこで,条件によってはコスト低減が期待されるサクションバケット基礎に着目し,その洗掘特性について,水理模型実験を行った.その結果,サクションバケットはモノパイルに比べて最大洗掘深が約13%低減することを明らかにした.また,杭径が中間領域となる本研究対象において,小口径および大口径円柱における洗掘特性とは異なる傾向を示すことがわかった.また,サクションバケットの最大洗掘深は,バケット直下で発生することを確認し,洗掘防止工をバケット周縁に設置することによる洗掘抑制が期待された.

  • 島田 良, 石川 仁憲, 澤頭 良介, 小峯 力
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     海浜での溺水事故の主要因は離岸流である.離岸流は様々な場所で発生するが,突堤等の海岸から沖に突出した構造物周辺では定常的に発生しやすいため,どのような条件で定常的な離岸流が発生するのかを明らかにすることは,溺水事故防止に有効と考えられる.本研究では,福井県若狭和田海岸を対象として,定点カメラの撮影画像に画像解析を適用することによって突堤周辺の離岸流の発生有無を判別し,波浪観測データと比較することで,突堤に沿った離岸流の発生特性を調べた.結果,計420ケースに対し81%の340ケースにおいて離岸流が判別され,対象海岸の突堤付近では,波高,周期,潮位に関係なく,定常的に離岸流が発生しやすいと考えられた.よって溺水事故防止の観点から,突堤付近での利用を徹底して回避していくことが重要であると考えられた.

  • 島田 良, 石川 仁憲, 澤頭 良介, 小峯 力
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,福井県若狭和田海岸を対象として,海岸に設置したwebカメラによる撮影画像を平均化し,離岸流域と砕波帯に設定した2箇所の平均画素値の差から離岸流の発生を自動的に検出する手法を検討した.経験豊富なライフセーバー3名による離岸流の発生有無の判断と,本手法により判別した離岸流の発生有無を比較した結果,検証データに対して正解率99.4%であった.一方,汎用性の検証として別の期間で本手法を適用した結果,正解率56.9%であり,波高0.5m未満,朝,夕方,曇,雨などの条件で正解率が下がっていた.理由として,離岸流域と砕波帯が明瞭ではなく画素値の差が小さかったこと等が考えられた.一方,波高0.5m以上の正解率は75%であったことから,本手法は,波高0.5m以上の条件では一定の精度で離岸流発生を判別できると考えられた.

  • Muhammad Amar SAJALI, Keisuke MURAKAMI
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     Miyazaki Sun Marina, which was constructed on the north side of Miyazaki Port, has been suffering from a sedimentation problem at the entrance to the marina channel since it was opened. No drastic solutions to this problem have been shown yet, and a dredging work has been done repeatedly around the entrance to the channel in order to keep safety navigation. This study investigated this sedimentation problem with using 3-dimensional numerical model, Delft-3D. The numerical simulation reproduced the sedimentation phenomenon around the entrance to the channel, and the sediment transport was discussed by referencing flow fields. This study also discussed the relationship between this sedimentation problem and the beach restoration program that has been implemented on the north of the marina. Furthermore, this study proposed a solution to mitigate the sedimentation problem at Miyazaki Sun Marina.

  • 高橋 巧, 岩本 崇, 坂井 友亮, 日比野 忠史
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     堆積泥微生物燃料電池(SMFC)は底泥の還元エネルギーを電力に変換するデバイスであり,底泥に鉄鋼スラグ(Steal Slag: SS)を混合するSS-SMFCは,鉄鋼スラグと底泥の混合電位-0.6Vまで低下させることで高い発電能力を得ることができる.一方,SS-SMFCはアノードの電流生産能力に対してカソードの電流処理能力が律速となり,一般的な電池と比較して内部抵抗が大きいため実用化に至っていない.本研究はSS-SMFCの実用的な発電仕様を構築の目的として,カソード過電圧を低減する通電方法を検討した.この結果,カソードの酸素供給速度を向上したエアーカソードの開発,電力密度を最大化する外部抵抗とカソード・アノード比を実験的に求め,SS-SMFCの規模拡大が電力向上に繋がることが示された.

  • 加島 寛章, 米山 治男, MANAWASEKARA Chathura, 田中 陽二
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     近年,2050年カーボンニュートラル実現に向けた動きを受けて洋上風力発電施設の導入が活発化するとともに,発電効率の向上や経済性のより高い大型風車に関する技術開発が進んでいる.しかしながら,大規模な風車の応答特性や発電規模と風車応答の関係等についてはほとんど明らかになっていない.そこで本研究では,発電規模の異なる着床式洋上風車を対象に,波と風の同時作用下における荷重連成解析を行い,各風車の応答特性の違いについて検討した.その結果,発電規模の異なる風車間の風応答特性が類似していることや風車の大型化により外力に対して風車が構造的に安定すること,同一波条件下でも風応答特性によって発電規模の異なる風車間で波による応答増幅特性が異なることがわかった.

  • 中村 友昭, 竹山 俊介, 白井 開斗, 趙 容桓, 水谷 法美, 倉原 義之介, 武田 将英
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     Flume式減揺タンクをSurge方向とSway方向に搭載した浮遊ケーソンに規則波,一方向不規則波,多方向不規則波を作用させる水理実験を実施し,ケーソンの動揺に対する減揺タンクの効果を考究した.Surge方向から一方向不規則波と多方向不規則波を作用させた実験より,Pitchの無次元全振幅は減揺タンクに搭載する自由水の増加とともに減少することが判明した.また,Sway方向から規則波と一方向不規則波を,Surge方向から多方向不規則波を作用させた実験より,Rollの無次元全振幅は減揺タンクに自由水を搭載することで減少するものの,自由水をさらに搭載すると自由水を搭載しなかった場合よりも大きくなる場合があることが判明した.したがって,Surge方向とSway方向のそれぞれの減揺タンクに最適な自由水量が存在することが示唆された.

  • 倉原 義之介, 武田 将英, 原 知聡, Ain Natasha Balqis , 中村 友昭, 水谷 法美
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     Flume式減揺タンクを搭載した浮遊ケーソンについて,境界要素法(BEM)を用いた数値解析手法を開発した.浮遊ケーソン周りの流体計算領域と減揺タンク内の流体計算領域でそれぞれの流体力を計算し,流体力計算と連成した運動方程式を解くことで動揺量を算出した.自由動揺実験を行い,Roll,Pitch方向で長さの異なる減揺タンクをケーソン上に設置した場合に,本実験条件ではRollの固有周期は増大し,Pitchの固有周期は減少する結果となった.作成した数値解析はこの自由動揺の固有周期の変化を概ね再現した.また,既往実験との比較により,規則波作用時のPitchおよびHeaveの動揺量,減揺タンクの減衰効果について,数値解析結果の検証を行った.解析結果はピーク動揺量の減少と周期の変化傾向を概ね再現した.

  • 小林 拓磨, 西畑 剛, 廣井 康伸, 保木本 智史
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     浮体式スパー型洋上風車施工でのスパー型浮体曳航において,横波作用時ならびに回頭時の動揺特性を把握するための水理模型実験を行った.横波作用下の曳航では,波周期や曳航速度が増加するにつれてRoll方向の動揺量が増加する傾向を確認した.回頭曳航実験では,曳航速度に対して回頭半径が小さい場合に遠心力によってスパーが外側に大きくRollingする現象を確認し,施工時における曳航速度と回頭半径による動揺量の評価を行った.また,補助曳船の有無による違いに着目し,補助曳船がないケースにおいては,波周期が小さくなると波漂流力が大きくなるため,回頭できない現象を確認できた.そのため,回頭曳航施工における補助曳船の必要性を確認した.

  • 惠藤 浩朗, 鹿島 瞳, 居駒 知樹, 増田 光一
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     弾性係留索には係留索張力が常に働き,浮体側の係留索取付け点が上下しても浮体動揺を抑える特性を有する.しかし弾性係留索は小型,中型浮体の係留には利用されているが,500mを超える大型浮体に適用された例はみられず,係留設計の技術基準やガイドラインに弾性係留索の係留設計についての記載は見受けられない.そこで弾性係留索の復元力特性に応じたVLFSの運動応答特性を明らかとし,解析対象のVLFSについての弾性係留索が適用可能な範囲の係留索の諸元を示すチャートを作成した.また不規則波中運動応答解析から得られた加速度を用いてVLFSの居住性能評価も行い,弾性係留索の安全性および常時の運用についても考慮した係留索の諸元の選定までの一連の手順も示す.

  • 小俣 哲平, 織田 幸伸, 橋本 貴之, 福原 哲
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     洋上風力の着底式基礎の建設において,外洋での大型クレーン船によるモノパイル建込み作業を想定した場合,吊り荷の動揺に対して,稼働率がどこまで確保できるのかを正しく把握することが工程・コスト算定に重要となる.そこで,杭を吊った状態での波浪動揺解析を実施し,吊り荷の挙動について検討した.解析の結果,船体及び吊り荷の固有周期付近で吊り荷は大きく動揺し,その運動は吊り荷の上下端部が逆位相となる2重振り子のような挙動となる場合があることが確認された.また,吊り荷の動揺はブームを通じ,船体への船首揺れ等の動揺に影響することも確認された.さらに,杭が水中に半没しているケースでは,気中にある場合に比べて動揺量は減少し,水面部分を支点とした回転挙動になることが確認された.

  • 惠藤 浩朗, 髙野 大輝, 居駒 知樹, 増田 光一
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     近年,海上と海底とを繋ぐライザーとしてSteel Catenary Riser(SCR)に浮力体を取り付けたSteel Lazy Wave Riser(SLWR)が注目されており,本研究では深海の静水圧を活用した水深4000mの海底の水素生産システムと小型浮体を結ぶSLWRを解析対象として,そのSLWRの特性を把握するとともに,SLWRが接続された小型浮体の係留装置を含めた動的挙動をまずは規則波ベースで明らかにすることを目的として研究を行った.また解析の結果から小型浮体はSLWRからも十分な水平力を受けていることが明らかとなったことから,SLWRの位置保持能力の有無についても検討を行った.

  • 赤倉 康寛
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     2050年カーボンニュートラル実現を目指す一環として,カーボンニュートラルポート形成に向けた施策が展開され,IMOにおいても国際海運の脱炭素化が議論されている.一方,2020年秋以降,輸送需要の増大と新型コロナウイルス影響による能力制約により,世界中の港湾で大量のコンテナ船が沖待ちを強いられており,そのCO2排出量増が懸念される.

     本研究は,我が国の東京湾の全コンテナターミナルを対象に,沖待ちを含む着岸船の航行速度を把握することにより,沖待ちによるCO2排出の増加量と,その対策の効果を推計したものである.その結果,沖待ちによる排出量増は停泊時の排出量の約15%に相当すること,入湾時刻の調整と湾内の減速航行により,排出量増の約3/4を削減出来る可能性があることが判った.

  • 清水 利浩, 桐生 翔, 眞井 里菜, 小薮 剛史, 望月 優生, 久保山 敬介, 木下 明, 黒滝 秀平
    2022 年 78 巻 2 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/18
    ジャーナル フリー

     近年,新型コロナウイルス感染症拡大を防止するため,海岸利用者においても「新しい生活様式」の実践が求められている.本研究では,感染リスクを低減させる海岸管理を行う方法として,海水浴等の海岸利用者に対し,適切な情報発信を行うために,AIカメラを独自製作し,低電力かつプライバシーに配慮しながら,リアルタイムで混雑状況を把握・配信する手法を開発した.開発したシステムを新潟市東区にある山の下船江浜海水浴場に設置し,海岸利用者を検出するAIの精度を検証した結果,学習済みのモデルを用いても,十分な精度を持って,リアルタイムで混雑状況を自動配信できることがわかった.さらにAIを活用することで混雑状況だけでなく,今後の海岸管理の課題を解決する方向性(海岸管理DX)についても提案を行った.

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