2012 年 68 巻 1 号 p. 216-225
構造物の実用的なモニタリング手法の開発では,計測が容易である慣性計測を有効に利用していく必要がある.しかし,慣性計測は重力を検知する方法であるため,加速度を検知する場合はセンサが傾斜することで,また,傾斜を検知する場合は加速度による誤差が生じる.これを測定誤差として許容してしまうと,低振動数域において誤差は大きく拡大されるため,変位等に変換する際には大きな問題となる.本研究では,慣性センサの補正方法について理論を構築し,いくつかの構造系を特定し補正の際のパラメータの求め方を示す.特に,単柱橋脚では,簡易なフィルタ処理により補正が可能であることを示し,実際の鉄道橋梁の単柱橋脚の天端に設置された慣性センサの列車通過時の応答を利用して,別途計測する変位計との比較から手法の有効性を検証する.