2022 年 78 巻 1 号 p. 190-202
多くの無塗装耐候性鋼橋梁が供用40年を超え,半世紀に近い時間で形成された緻密な保護性さび層を有する溶接継手の疲労強度を明らかにする必要がある.本研究では41年間大気暴露された耐候性鋼溶接継手のさび層計測,さび組成分析,疲労試験を実施した.さび層厚さ,腐食ピット深さ,溶接止端付近のさび表面半径は,大気暴露期間25年と同程度または若干の増加が見られた.さび組成構造は,25年を超える既往の耐候性鋼と同様にα-FeOOH層が地鉄付近に分布する保護性さび層であった.その上で,疲労強度は大気暴露期間25年と同程度から長寿命側であり,保護性さび層の維持により疲労強度も維持されたことを裏付けた.加えて,目視と磁粉探傷試験によるき裂検出を試み,保護性さび層がき裂に被ることで,き裂発生初期の検出精度低下が課題になると示唆した.