2021 年 77 巻 2 号 p. I_148-I_156
本研究は,水災害リスクが高く交通利便性が良好な市街地を対象とした事例分析を通して,今後の住まい方を考察するものである.まず住民アンケート調査を行い,人々の居住地選択に対する意識の変化を明らかにする.次に土地総合情報システムのデータベースを用いて,宅地取引の活発度や価値の変化を明らかにする.分析の結果,人々は災害リスク情報が注目されるようになってから以降でも,災害リスクより交通利便性を重視して住まいを選択する傾向にあり,水害リスクから家屋を守る対策は十分ではない可能性があることがわかった.またそのような地域の宅地取引は,利便性が特に高い場所を除けば活発ではないことが明らかとなった.昨今の急激な人口減少・高齢化問題を踏まえると,今後の住まい方としては,現在の都市構造を維持しつつ,災害リスクから住居を守る制度の充実が現実的と考えられる.