2020 年 76 巻 1 号 p. 14-31
地下鉄開削トンネルの縦断方向の一部に大きな沈下や沈下に伴うひび割れが多く見られ,その使用にあたって耐荷性能を精度よく評価することが課題となっていた.そこで,鉄筋ひずみの調査を行ったところ,トンネルの中立軸位置が設計計算の値と大きく異なることがわかった.この要因として,トンネルにひび割れが生じることでトンネル縦断方向に伸長する挙動が,両端の変状が起こっていない部分により拘束されることにより見かけの軸力が発生するといったメカニズムを想定し,軸力の算定方法を検討した.さらに,この軸力を用いて構造計算を行った結果,見かけの軸力を与え,トンネル形状を再現した疑似3次元モデルを用いることで,トンネルのひび割れ状況などの変状を精度よく再現できることがわかり,軸力の発生メカニズムの妥当性が確認できた.