日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
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移流拡散問題におけるBスプライン基底関数を用いた特性ガラーキン法
丸岡 晃山田 貴博
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2012 年 2012 巻 p. 20120001

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抄録
一般的な有限要素法では, ラグランジュ補間多項式に基づく要素 (ラグランジュ要素) が用いられ, 高次の補間次数を用いることによって高精度化を図ることができる. しかしながら, 近年, 波動方程式や移流拡散方程式ではラグランジュ要素の高次化が必ずしも高精度化につながらないことが指摘されている. この要因の一つには, 高次ラグランジュ要素を用いても要素境界での導関数が連続にならないことが挙げられる. これに対し, 要素境界で1階導関数が連続になる3次エルミート要素, また, p次の区分多項式により構成され, p-1階導関数まで連続にできるBスプラインやNURBS (Non-Uniform Rational B-spline) の基底関数を用いた手法が提案され, 高次ラグランジュ要素に対する優位性が示されている. さらに, Hughesらによって提案されたアイソジオメトリック解析は, CADの形状表現によく用いられるNURBSを数値解析に直接適用するという点においてCADとの融合を目指した手法としても注目されている.
移流の卓越するような流れに対する解析手法は, 大きく風上法と特性法に分けられ, 導関数が連続となる基底関数を用いた手法として, これまで両方に基づく手法が提案されている. 風上法に基づく手法では, NURBSを用いたHughesらによる研究がある. 最初の論文でSUPG法による定常移流拡散問題の解析例が紹介され, さらに, 安定化法, VMS法による乱流解析, 流体・構造連成解析等, 多数の応用的な研究が行われている. 一方で, 特性法に基づく手法の研究例は少ないが, 3次エルミート型要素やBスプラインを用いた特性ガラーキン法が提案されている. 特性ガラーキン法は, 安定化のための人工的なパラメータを必要としないことや連立一次方程式の係数行列が対称になるという特徴がある. また, Bスプラインを用いた手法に関しては, 増幅誤差および位相誤差に関する数値特性の評価が行われ, 高次精度の上流差分法と類似の特性を持ち, ガラーキン法の枠組みで高精度な上流化手法を構築できることが示されている. しかしながら, 風上法に基づく手法については, 基本的な非定常移流拡散問題の解析例はあまり報告されていない. また, 特性法に基づく手法についても実際の解析や誤差評価を行った研究は行われていないのが現状である.
そこで本研究では, Bスプライン基底関数を用いた特性ガラーキン法に着目し, 流れ解析において最も基本的な移流拡散方程式に対してこの手法による定式化を示し, 厳密解の明かな2次元の非定常移流拡散問題の解析を行う. また, 比較のために同様の基底関数を用いたSUPG法による解析も行う. さらに, それぞれの解析に対する誤差評価を行うことによって, それぞれの手法の有する数値特性を把握する.
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© 2012 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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