2017 年 17 巻 p. 76-88
本研究の目的は,保育所における子育て支援の際,保育者が共感的メッセージを発信するために用いるコミュニケーション技法であるナラティヴ・ストラテジーを可視化することである.研究対象として4歳児クラスで発行されたおたより(学級通信)やクラス日誌(学級日誌)に着目し,質的分析主導型の混合研究法としてデザインされたナラティヴ分析を実施した.
質的分析では,クラス内の出来事をめぐり,クラスだよりと保育日誌の語り口にどのような差異があるのかという観点から比較した結果,6種類のストラテジーが抽出された.量的分析では,同じ学年で複数年度におけるストラテジーの出現頻度について比較することで,各ストラテジーが一過性の事象ではないことを確認した.
最後に,保育者が,保護者にむけてナラティヴ・ストラテジーを駆使しながら語りを展開することの効用について考察し,保育者自身による実践の振り返りにも影響を及ぼすことが示唆された.