子ども家庭福祉学
Online ISSN : 2758-2280
Print ISSN : 1347-183X
論文
カンボジアのケア施設入居を通じた心理的・物理的変化のプロセスに関する質的研究―バッタンバン州A施設入居者26人への聞き取り調査から―
小坂井 真季
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2020 年 20 巻 p. 94-107

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抄録

本研究の目的は,カンボジアにあるA施設を事例とし,施設退所者が施設入居を通じて経験した心理的及び物理的な変化の過程を明らかにすることである.本論文では,26名に対する聞き取り調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.調査の結果,「施設入居時」の時点では施設を好意的に捉えていた.「施設滞在中」には,入居者は労働をしなくて良い環境で生活することができ,その上で教育・職業・ライフスキルが提供され,旅行等の新たな経験が複合的に影響を与え入居者の自信を創出し,そして目標の獲得にまで至っていた.「施設退所」の際には寂しさを感じ,施設は入居者にとっての「心の拠り所」となっていた.教育や職業訓練等の目に見える伝統的な支援だけではなく,日々の生活における職員との関わりを通じて入居者は物理的な成長をしたと自ら感じ取っており,退所後の自立につながっていた.

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© 2020 日本子ども家庭福祉学会
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