2004 年 27 巻 1 号 p. 40-47
症例, 54歳女性. 2001年11月頃より, 両手指のこわばり, 関節痛が出現し, 次第に増悪したため, 2002年1月に近医を受診した. その際, 抗核抗体陽性, 肝機能障害を指摘され, 当科初診, 2月に精査加療目的に当科入院となった. 入院時, 抗核抗体および抗DNA抗体陽性, platelet-associated IgG上昇を伴う血小板減少, 関節炎より, 全身性エリテマトーデスと診断した. また肝機能障害に対して, 肝生検を施行したところ, グリソン鞘に形質細胞浸潤を認め, 自己免疫性肝炎と診断した. さらに汎血球減少, 著明な脾腫および食道静脈瘤を認めたことから, 腹部血管造影を施行したところ, 肝静脈楔入圧は軽度上昇を示し, 肝静脈のしだれ柳状変化, 肝静脈枝相互間吻合が発達している所見を得, 特発性門脈圧亢進症の合併も確認した. prednisolone 40 mg/日投与を開始したところ, 血球減少および肝機能障害は改善した. また半年後の内視鏡所見では食道静脈瘤は消失, 腹部エコーでは脾腫の改善を認めた. 全身性エリテマトーデスに合併する特発性門脈圧亢進症の基盤には, 自己免疫機序が想定され, ステロイドは治療の選択肢の一つになり得る可能性が示唆された.