2006 年 29 巻 6 号 p. 372-377
流産または死産をくりかえした抗リン脂質抗体陽性例における補体の変動を検討した.
方法 2回以上流産または死産をくりかえした82例を対象とした.このうち抗核抗体陰性,自己免疫疾患のない2回以上流産または死産をくりかえしたもの58例を対照とした.抗リン脂質抗体は抗カルジオリピン抗体(ACA)と抗CL/β2-GPI抗体はELISA法,ループスアンチコアグラント(LAC)は希釈ラッセル蛇毒試験法(dRVVT法)によった.補体はCH50, C3, C4を検討した.82例中ACAは23例,抗CL/β2-GPI抗体は9例,LACは5例が陽性であった.58例はいずれの抗体も認めなかった.
結果 ACA陽性例ではCH50, C3, C4の平均値±標準偏差はそれぞれ38.8±8.3 U/ml, 82.7±20.1 mg/dl, 18.5±5.7 mg/dlとなり抗リン脂質抗体陰性群では42.4±6.9 U/ml, 93.5±17.6 mg/dl, 21.1±4.6 mg/dlとなりACA陽性例群で有意な低下を認めた.抗CL/β2-GPI抗体陽性例,LAC陽性例でも抗リン脂質抗体陰性群に比し有意な低下を認めた.
結論 ヒトにおいても2回以上流産または死産をくりかえした抗リン脂質抗体陽性例で補体価が低下することが判明した.