日本臨床免疫学会会誌
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総説
全身性エリテマトーデスにおけるリンパ球のテロメラーゼ活性およびテロメア長の異常
黒坂 大太郎
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2007 年 30 巻 1 号 p. 29-36

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抄録
  全身性エリテマトーデス(SLE)においてT細胞のテロメラーゼ活性は活動期,非活動期どちらにおいても高い.一方,B細胞のテロメラーゼ活性は活動期においてのみ異常に高い.また,正常群と比べてT細胞のテロメア長は短く,B細胞のテロメア長は変わらない.このことからSLEのT細胞は常時活性化しているが,疾患の顕在化にはそれだけでは不十分で,B細胞の活性化が重要であると考えられた.SLEの臨床症状を抑えるだけならば,B細胞の抑制だけで十分かもしれない.しかしながら,本質的な治療を行う為にはT細胞をもターゲットに入れた治療が必要であると考えられた.近年SLEの治療に各種生物製剤が用いられ始めている.今後,このような生物製剤を用いた場合の各リンパ球におけるテロメラーゼ活性の動向は興味深い.SLEに対する生物製剤を用いた治療戦略を組み立てる際に,各リンパ球におけるテロメラーゼ活性の測定は,適切なターゲット細胞の設定,治療薬の選択,治療効果の判定などに有用となると考えられた.
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© 2007 日本臨床免疫学会
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