日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
深在性エリテマトーデスにて加療中,重篤な消化管病変を伴う全身性エリテマトーデスへの進展を認めた一例
小原 美琴子高橋 裕樹鈴木 知佐子山本 元久苗代 康可山本 博幸嵯峨 賢治篠村 恭久今井 浩三
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2007 年 30 巻 1 号 p. 48-54

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抄録
  症例は52歳女性.1984年,腰背部などに皮疹を認め,当院皮膚科を受診,生検にて深在性エリテマトーデス(LEP)と診断された.中等量のプレドニゾロン(PSL)にて治療中の2003年10月に腹痛・発熱・粘血便が出現し,当院緊急入院となった.抗DNA抗体上昇・血清補体価低下と腹部CT上,腸管壁の浮腫性変化を認め,ループス腸炎と診断し,ステロイド大量投与を開始した.一過性の改善をみたが,第24病日より再び下血をきたし,下部消化管内視鏡検査にて直腸に深掘れ潰瘍が認められた.注腸造影検査上,穿孔も疑われ,第50病日直腸切除および人工肛門造設術施行となった.病理組織学的に漿膜下層まで組織が欠損し,血管には炎症細胞浸潤がみられたため,大腸病変の原因として血管炎が示唆された.2004年11月には再発なくPSL 10 mg/日まで減量となり,2005年2月に人工肛門閉鎖術施行後も順調な大腸機能の回復をみた.一般にDLEに合併する全身性エリテマトーデス(SLE)は軽症とされるが,本例はLEPから重篤なループス腸炎・腸潰瘍を伴ったSLEに移行した稀な一例であった.SLEの消化管病変に対しては,腹部外科医との密接な連携により外科治療も念頭においた慎重な経過観察が必要であると考えられた.
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© 2007 日本臨床免疫学会
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