日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:Autoinflammatory syndromeの新たなる展開と治療法の確立
TRAPSの診断と新しい治療法の展開
井田 弘明江口 勝美
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2007 年 30 巻 2 号 p. 90-100

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抄録

  TNF-associated periodic syndrome (TRAPS)は,TNFが病態の中心と考えられる遺伝性周期性発熱症候群の一つである.TNFRSF1A(TNFR1)分子が細胞表面に留まり,TNFからの反応が持続するため,発熱などの様々なTRAPS症状が出現すると単純に考えられてきた.ところが,最近,TNFRSF1A分子の切断異常がみられない症例や突然変異のないTRAPS症例もあること,さらに孤発例も存在することが判明し,TRAPSとは大変heterogeneousな症候群であることがわかってきた.最近,細胞表面に発現されないTNFRSF1A分子が,TNFと無関係に細胞内で凝集し,NF-κBの活性化やアポトーシス誘導を生じていることも報告され,TRAPSの病因は混沌としている.本邦において,現在までTNFRSF1A遺伝子に突然変異をもつTRAPS症例は5家系15名と少ないが,突然変異のない孤発例は多い.本稿では,TRAPSについて自験例を提示しながら臨床像を紹介するとともに,TNFRSF1A分子の発現制御機構から考えられるTRAPSの病因,その病因とこれまで経験した症例から検討した診断のためのフローチャート,および,現存の治療法と私たちが試みた新しい治療法などを解説した.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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