日本臨床免疫学会会誌
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総説
異種移植の臨床
宮川 周士
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2007 年 30 巻 3 号 p. 174-184

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抄録

  移植を待つ患者の数と実際のドナーの数の差から,今また異種移植が注目されつつある.この総説は実際の臨床を主体としてまたそれを目指した遺伝子改変したブタ作りを焦点としている.
  ブタの臓器にDAF(CD55)を中心としたヒト補体制御因子を発現させ,また糖転移酵素,α1,3 galactosyltransferase (α1,3GT)が作り出すα-Galエピトープ(Galα1-3Galβ1-4GlcNAc-R)をノックアウトする試みは,既にハーバード大学,ピッツバーグ大学,メイヨークリニック,ブレザジェンなどでおこなわれている.我々も,DAF (CD55)と糖転移酵素GnT-IIIを発現しこのα-Galエピトープをホモでノックアウトしたブタ,を昨年開発している.
  一方,臨床のブタ膵島移植は多くの国(ロシア,スエーデン,メキシコ,中国)で2005年まで行われており,アメリカでもここ3年以内に臨床治験が始まる予定である.
  加えて,異種移植領域の最近の研究,たとえば糖鎖抗原や補体の活性化やNK細胞やその他の免疫反応を押さえる研究を紹介する.また,ブタ内在性レトロウイルス(PERV)の感染性に関する研究も報告する.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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