[目的]ループス腎炎患者の妊娠・出産におけるリスクを明らかにする.
[対象・方法]1986~2004年の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院で妊娠・出産したループス腎炎患者26例,34回妊娠の妊娠転帰・児の予後・母体の疾患活動性について後方調査を行った.
[結果]1. 34回の妊娠転帰は自然流産2回(5.9%),早期産5回(14.7%),満期産23回(67.6%)で,人工流産4回(11.8%)のうち治療目的の人工流産2回(5.9%)であった.腎症の有無で妊娠転帰に差はなかったが,腎症群では,妊娠前腎症活動性有群で有意に妊娠転帰・児の予後が悪かった.2. SLE再燃(15回,50%)は腎症群で有意に増加したが,再燃時期は一定しなかった(妊娠中8回,分娩後7回).腎症再燃(6回,20.7%)は妊娠第1期(3回),2期(3回)のみでみられた.3. 妊娠前検査所見の中で,蛋白尿,血清クレアチニン値,SLEDAIスコアと生産した児の在胎週数;蛋白尿,血清クレアチニン値と児の出生体重と有意に負の相関が見られた.4. 既往組織所見では,WHO分類IV型腎症例,特に妊娠時点で腎症活動性のあった症例で妊娠転帰・児の予後が悪い傾向がみられた.
[結論]既往WHO分類IV型腎症例,妊娠時点でSLEDAIスコアの高い症例,蛋白尿陽性症例,血清クレアチニン値の高い症例の管理を慎重に行うべきと考えられた.