日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
Segmental arterial mediolysisの一例
高橋 裕子森口 正人住永 佳久長汐 千秋狩野 俊和鈴木 暁岳国松 淳和浅尾 りん山下 裕之伊藤 健司三森 明夫
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2007 年 30 巻 3 号 p. 193-197

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抄録

  Segmental arterial mediolysis (SAM)の一例を報告する.症例は58歳女性.生来健康であった.突然の右側腹部痛が出現し,ショック状態になった.腹部CTで右後腹膜血腫を認め,緊急血管造影を行った.上腸間膜動脈より分岐する中結腸動脈に仮性動脈瘤と造影剤の漏出を認め,破裂動脈からの出血と判断しコイルにより止血を行った.上腸間膜動脈の近位から末梢までの血管径の不整,狭窄が認められた.空腸動脈には小さな球状の仮性動脈瘤が認められた.炎症反応は一過性のCRP上昇のみで,抗生物質,ステロイド薬などの投与なしに自然に消退した.3ヵ月後の血管造影で,以前に認められた仮性動脈瘤の像は見られなかった.画像所見は,結節性多発動脈炎(PN)に類似したが,病態は一過性であり,全体像からSAMと診断した.SAMは,基礎疾患なく,中高年者に突然発症し,脾動脈,上腸間膜動脈などの腹腔内出血を来たして発見される稀な疾患である.動脈中膜が融解し,外膜の間に解離を生じ,外膜が拡張し動脈瘤が形成され破裂されることが考えられている.PNとの鑑別が重要になると考えられたため報告する.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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