抄録
症例は33歳女性,2001年,全身性エリテマトーデスと診断され,ステロイド剤とciclosporinの投与にて治療されていた.2006年5月頃より,両下肢の脱力を自覚し,徐々に自立歩行が困難となった.7月より全身倦怠感,発熱,食欲不振,見当識障害を認め,入院となった.入院後まもなく,全身性痙攣が出現し不穏状態となった.さらに同時期より尿閉,便失禁,下肢末端の強いしびれが出現した.MRI上,脳に異常所見はなく,胸髄の萎縮所見が認められた.血中の抗リボソームP抗体の上昇と髄液の蛋白およびIL-6の増加所見をあわせ,中枢神経性ループス,ループス脊髄炎と診断した.ステロイドパルス療法および経口ステロイド療法を行い,痙攣,意識障害の改善を認めた.その後も尿閉,下肢の感覚運動障害は遷延したが,cyclophosphamideパルス療法の併用により,10月頃より自尿の再開,下肢の脱力としびれの改善を認めた.自立歩行が可能となり11月退院となった.本症例は,中枢神経性ループスによる意識障害,痙攣,膀胱直腸障害,下肢の運動,感覚障害等の多彩な症状と血中抗リボソームP抗体の高値を認め,ステロイドパルス療法およびcyclophosphamideパルス療法が著効した症例である.