日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:診療科の壁を越える共通語―IL-6を例として
IL-6阻害療法が教えてくれた病態解析と治療への展開
吉崎 和幸
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2008 年 31 巻 2 号 p. 104-112

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抄録
  関節リウマチでは様々な細胞が活性化され,様々なサイトカインやケモカインが産生されている.また,急性期蛋白が発現する.この事実を知らない者はいない.しかしながら炎症における急性期蛋白の発現機序を知る者もいない.今回IL-6分子のみを阻害することによって正常値化したことからCRP及びSerum amyloid A (SAA)の細胞内の発現機序の解明を試みた.肝細胞を用いたin vitro実験ではあるが,あえてIL-6を含む複数のサイトカイン刺激の系を用いて解析した.その結果これらの急性期蛋白の発現にIL-6が必須であり,特にSTAT3の活性化が中心であることを明らかにした.同時にCRPもSAAも今まで言われていないSTAT3の転写機序によって発現することも明らかとなった.更に炎症における転写因子の複合体形成様式から,形成阻害による新たな治療へのアプローチも考えることができた.IL-6治療はIL-6単独阻害であるため,病態におけるIL-6の意義を明らかにし得るとともに,その解析からさらに新しい治療法も展開し得ると考えられる.トシリズマブによる治療では細菌,ウイルスの易感染が1つの不利益である.新たな治療法が可能になればこの問題も解決できるものと思われる.
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© 2008 日本臨床免疫学会
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