日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:特異抗原をターゲットとしたImmunotherapy
新しい結核ワクチンの開発
岡田 全司
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2008 年 31 巻 5 号 p. 356-368

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抄録
  1998年,米国CDC及びACETは新世代の結核ワクチン開発の必要性を発表した.しかしながら,BCGワクチンに代わる結核ワクチンは欧米でも臨床応用には至っていない.我々はBCGを凌駕する強力な結核予防ワクチン(HVJ-エンベロープ(又はリポソーム)/HSP65+IL-12 DNAワクチン)を開発した.結核免疫を強く誘導するヒト結核菌由来のHSP65蛋白をコードするDNAを用いた.プライム・ブースター法を用い,HSP65 DNA+IL-12 DNA (HVJ-エンベロープベクター)のワクチンはBCGよりも1万倍強力な結核予防ワクチンであり,CD8陽性キラーT細胞の分化,IFN-γ産生T細胞の分化を増強した.肺の結核病理像を改善した.このワクチンは多剤耐性結核菌に対しても治療ワクチン効果を示した.さらに,ヒト結核感染モデルに最も近いカニクイザル(Nature Med. 1996)を用い,このワクチンの強力な有効性を得た.カニクイザルにワクチン接種後ヒト結核菌を経気道投与し,1年以上経過観察した.免疫反応増強及び胸部X線所見・血沈,体重の改善効果が認められた.また,生存率改善・延命効果も認められた.
  BCGワクチン・プライム-DNAワクチン・ブースター法を用いた群は100%の生存率を示した.一方,BCGワクチン単独群は33%の生存率であった.このワクチンが強力な成人ワクチンとなることが示唆された.
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© 2008 日本臨床免疫学会
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