日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:特異抗原をターゲットとしたImmunotherapy
新規癌胎児性抗原Glypican-3の肝細胞癌の診断と免疫療法への応用
西村 泰治中面 哲也千住 覚
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2008 年 31 巻 5 号 p. 383-391

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抄録

  ヒトの肝細胞癌組織と正常組織におけるcDNAマイクロアレイ解析により,肝細胞癌に高発現する遺伝子としてGlypican-3 (GPC3)を同定した.GPIアンカー膜蛋白質であるGPC3は,肝細胞癌患者の約40%の血清中に検出される新規癌胎児性抗原であり,αフェト蛋白,PIVKA-IIにつぐ肝細胞癌の第3の腫瘍マーカーとして有用であることを示した.また,マウスにGPC3ペプチドを負荷した樹状細胞を投与した後に,マウスGPC3を発現する癌細胞株を移植すると,自己免疫現象を伴うことなく著明な腫瘍の増殖抑制と生存期間の延長を誘導できた.さらに,HLA-A2トランスジェニックマウスや,癌患者の血液検体を利用して,HLA-A2あるいはA24によりヒト・キラーT細胞に提示されるGPC3ペプチドを同定した.これらのペプチドで癌患者のリンパ球を刺激することにより,GPC3発現ヒト肝細胞癌細胞株を傷害するヒト・キラーT細胞を誘導できた.これらのGPC3ペプチドを用いた,肝細胞癌の免疫療法に関する臨床試験を開始した.また,我々はマウス胚性幹(ES)細胞から樹状細胞(ES-DC)を分化誘導する方法を開発し,マウスGPC3を発現するES-DCをマウスに免疫したところ,GPC3発現マウス癌細胞株に対するin vivo抗腫瘍効果の誘導が観察された.

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© 2008 日本臨床免疫学会
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