日本臨床免疫学会会誌
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総説
Jak阻害薬の抗リウマチ薬としての可能性とその作用機序
山岡 邦宏田中 良哉
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2009 年 32 巻 2 号 p. 85-91

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抄録

  関節リウマチ(RA)の治療は生物学的製剤により飛躍的に進歩したが,投与経路や医療経済面の問題のため新たな抗リウマチ薬の開発は必須である.最近,チロシンキナーゼであるJakを標的とした阻害薬の高い有効性が報告されている.JakファミリーにはJak1, Jak2,Jak3とTyk2が存在し炎症性サイトカインのシグナル伝達には必須である.Jak1/2を標的としたINCB18424とJak3を標的としたCP690, 550はRAを対象とした臨床試験が第II相まで進行している.2008年のアメリカリウマチ学会において経口薬としては今までにない高い有効性を有し,副作用が少ないことが明らかとなった.しかし,予測されている程の特異性を有さないことが指摘されていながら,一方ではその非特異性が少ない副作用に寄与している可能性も指摘されている.つまり,その作用機序は単純な一分子阻害ではなく,予想外の作用機序を有する可能性が考えられる.我々はJak3とその下流で活性化される転写因子Stat6の欠損マウス由来樹状細胞の解析を行い,IL-10過剰産生を見出し,Jak3阻害薬の一作用機序と考えている.しかし,阻害薬の特性からその作用機序は複数あると考えられ今後の作用機序解明は長期投与の際の副作用予測にも欠かせないと考える.

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© 2009 日本臨床免疫学会
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