日本臨床免疫学会会誌
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総説
炎症増強因子としてのTREM-1
村上 洋介上阪 等
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2009 年 32 巻 4 号 p. 242-248

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抄録

  Triggering receptor expressed on myeloid cells (TREM)-1は,ミエロイド系細胞に発現するレセプターで,TLRと協調的に働くことにより,炎症反応を増強する特徴を有している.リガンドは不明であるが,TREM-1細胞外ドメインにIgG-Fcを融合させたTREM-1-IgによってTREM-1の働きを阻害すると,敗血症などの感染症からマウスを保護することができる.これらのことからTREM-1阻害は感染症制御に有用であることがわかってきた.一方,微生物の関与しない炎症性疾患についてTREM-1の作用は不明であった.我々はTREM-1の発現はTLRリガンドだけでなくPGE2や尿酸結晶によって誘導されることを認めた.また,TREM-1は尿酸結晶誘発性炎症の炎症反応を増強する作用も見出した.さらにTREM-1は自己免疫疾患である関節リウマチやその動物モデル(CIA)においても発現が認められ,CIAにおいてTREM-1を阻害すると,関節炎は著明に改善された.以上のことから,TREM-1が微生物以外の炎症性疾患の有用な治療標的分子となりうることを明らかにした.

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© 2009 日本臨床免疫学会
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