日本臨床免疫学会会誌
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総説
高齢発症関節リウマチの治療
大西 佐知子岩本 雅弘簔田 清次
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2010 年 33 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

  高齢者人口の増加に加え,治療薬の改良により関節リウマチの予後が改善し,高齢の関節リウマチ患者が増加している.関節リウマチ発症年齢も高年齢化しており,特に60歳以上で発症した関節リウマチを,高齢発症関節リウマチ(elderly-onset rheumatoid arthritis : EORA)と呼ぶ.関節リウマチは発症2年以内に骨破壊が始まることが多く,早期に適切な治療を開始することが必要である.一方,高齢者は身体機能が低下するため,薬による副作用を高率に生じ,また副作用が重症化し回復に時間がかかる.このため若年者より慎重に薬物投与を検討する必要がある.しかし,慎重になりすぎるあまり,理想とする治療から離れてしまうことも多い.事実,高齢者に対しては抗リウマチ薬の多剤併用率や生物学的製剤使用率は低く,メトトレキサートの平均使用量も少ないが,副腎皮質ステロイドの使用頻度は高い.このためEORAでは,活動性が高く骨破壊が最も進行する発症早期に適切な治療が受けられない可能性がある.EORA患者のADLの低下を防ぎ感染のリスクを減らすためには,抗リウマチ薬を適切に使用することで疾患活動性を十分にコントロールし,副腎皮質ステロイドを減量・中止することが重要である.

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© 2010 日本臨床免疫学会
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