日本臨床免疫学会会誌
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33 巻, 1 号
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総説
  • 大西 佐知子, 岩本 雅弘, 簔田 清次
    2010 年 33 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      高齢者人口の増加に加え,治療薬の改良により関節リウマチの予後が改善し,高齢の関節リウマチ患者が増加している.関節リウマチ発症年齢も高年齢化しており,特に60歳以上で発症した関節リウマチを,高齢発症関節リウマチ(elderly-onset rheumatoid arthritis : EORA)と呼ぶ.関節リウマチは発症2年以内に骨破壊が始まることが多く,早期に適切な治療を開始することが必要である.一方,高齢者は身体機能が低下するため,薬による副作用を高率に生じ,また副作用が重症化し回復に時間がかかる.このため若年者より慎重に薬物投与を検討する必要がある.しかし,慎重になりすぎるあまり,理想とする治療から離れてしまうことも多い.事実,高齢者に対しては抗リウマチ薬の多剤併用率や生物学的製剤使用率は低く,メトトレキサートの平均使用量も少ないが,副腎皮質ステロイドの使用頻度は高い.このためEORAでは,活動性が高く骨破壊が最も進行する発症早期に適切な治療が受けられない可能性がある.EORA患者のADLの低下を防ぎ感染のリスクを減らすためには,抗リウマチ薬を適切に使用することで疾患活動性を十分にコントロールし,副腎皮質ステロイドを減量・中止することが重要である.
  • 武井 修治
    2010 年 33 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      SSは唾液腺等の外分泌腺組織へのリンパ球浸潤を特徴とした自己免疫疾患であり,腺構造が破壊されて乾燥症状が惹起される.小児では稀少疾患と考えられていたが,最近の疫学調査では小児10万人あたり0.5~2.5以上の有病率が想定され,小児でもSLEに次ぐ頻度であることが判明した.
      小児SSでは,腺組織へのリンパ球浸潤を認め,分泌機能低下があっても自覚的な乾燥症状に乏しいことが特徴であった.また長期間観察した報告から,分泌腺組織障害による分泌機能低下の進行は小児SSでは極めて緩徐であることが伺えた.その一方で,抗SS-A/B抗体やリウマトイド因子等の自己抗体は,成人同様に初診時から陽性であり,成人SSで特異的とされた抗α-fodrin抗体も小児SSでも高率に検出されていた.このことから,小児SSと成人SSとの間には本質的な病態の相異はないものと考えられた.
      したがって小児SSの臨床像の特性は,SSの早期病態を反映したものであり,小児SSの診断には,早期病態を想定した小児SSのための基準が必要と思われた.また対症療法しかないSSの治療において,病態の寛解導入をめざした治療を確立するには,小児SSが絶好のターゲットと思われる.
  • 高田 英俊, 峯岸 克行
    2010 年 33 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      高IgE症候群は,乳児期早期から始まる難治性湿疹,反復性黄色ブドウ球菌感染症(皮膚,肺,関節,軟部組織など)によって特徴づけられ,高IgE血症を示すまれな原発性免疫不全症である.これらの症状以外に,顔貌異常,易骨折,側彎,関節過伸展,乳歯脱落遅延などを呈することも多く,multisystem diseaseの病像を呈する.この優性遺伝形式をとる高IgE症候群に加えて,劣性遺伝形式を示すものもある.高IgE症候群の原因は長年不明であったが,STAT3, TYK2, DOCK8などの責任遺伝子が解明され,その病態が次々と明らかになりつつある.
症例報告
  • 木幡 桂, 藤原 亨, 山本 譲司, 山田 実名美, 石澤 賢一, 佐藤 和重, 関口 悟, 亀岡 淳一, 里見 進, 張替 秀郎
    2010 年 33 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      ABO一致生体肝移植後に発症した重症自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を経験したので報告する.症例は56歳男性,2007年7月に,息子をドナーとして生体肝移植を受け,術後経過は良好であったが,移植後8週後よりビリルビンの上昇,貧血が進行.Direct Antiglobulin Test (DAT)陽性であり,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断にて,プレドニゾロン,アザチオプリン,リツキシマブの投与に加え,血漿交換を実施したが,治療抵抗性であった.サイクロフォスファミドパルス療法とリツキシマブの併用にて,最終的に寛解が得られた.現在,DATも陰性化し無治療にて経過観察中である.本症例のAIHAの発症機序は明らかではないが,肝移植を契機に発症しており,極期の重症度に比較してその後の経過が良好であることから,その発症にドナー由来リンパ球が関与している可能性が否定できないと考えられた.
  • 井上 大地, 戸上 勝仁, 下池 典広, 田村 亮, 今井 幸弘, 木村 隆治, 下地 園子, 森 美奈子, 永井 雄也, 田端 淑恵, 松 ...
    2010 年 33 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は50歳女性.急激に進行する意識障害,腎不全,肝機能障害,溶血性貧血,血小板減少,発熱のために2008年7月,当院に救急搬送された.病歴から血栓性血小板減少性紫斑病が疑われ,血漿交換を開始したが,入院後1週間以内に,血栓による腸管穿孔,脾梗塞を併発し,さらに,フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)が陽性であったことから,劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)と考えられた.他の抗リン脂質抗体は,ループスアンチコアグラント(LA)が経過中1度だけ陽性となった.基礎疾患は,病歴・検査所見から全身性エリテマトーデス(SLE)が疑われた.CAPSは,過半数例で死の転帰をとるが,腸管穿孔に対しては,腸切除などの外科的処置を施行し,また,高容量のステロイド療法とヘパリンやワーファリンによる抗凝固療法を血漿交換に併用し,救命に成功した.CAPSは,短期間で全身の微小血管に血栓をきたす予後不良な疾患であり,現在の診断基準にはaPS/PTが含まれていないものの,aPS/PTはLAの存在や血栓症と強い相関がある.本例は診断に難渋したものの,臨床経過,組織学的な血栓の証明,抗リン脂質抗体の存在から,早期に治療介入でき,また,aPS/PT抗体価が病勢を反映して低下した.貴重な症例と考えここに報告する.
  • 和倉 大輔, 米田 雅子, 小谷 卓矢, 江頭 由太郎, 永井 孝治, 庄田 武司, 鍵谷 真希, 武内 徹, 槇野 茂樹, 花房 俊昭
    2010 年 33 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は57歳男性.2006年5月より黒色便が出現.上部消化管内視鏡検査にて胃十二指腸潰瘍を認め,同部よりの生検は血管炎の所見であった.以後,急速に腎障害が進行したため,精査加療目的にて同年6月21日に当科に入院となった.CRP 22.53 mg/dlと炎症反応が高値であり,MPO-ANCA陽性(26 EU)と併せ顕微鏡的多発血管炎と診断した.ステロイドパルス後,Prednisolone 1 mg/kg/日の投与を開始し,Cyclophosphamide (CPA) 100 mgを点滴静注すると共に,経内視鏡的止血術を頻回に繰り返したが,潰瘍からの出血は止まらず,入院第18病日に止血目的にて膵頭胃十二指腸切除術を施行した.術後,小腸より出血が再発し,入院第27病日には,胸部CTにて両肺に空洞を伴う結節影が出現した.同部の生検にて血管炎の所見を得たため,血管炎の活動性が増悪していると判断し,ステロイドパルス,大量ガンマグロブリン療法(20 g×5日間),CPA 500 mg, Rituximab 500 mgを投与したが改善せず,出血性ショックのため入院第42病日に死亡した.消化管潰瘍で発症し,その後,急速進行性腎炎と肺結節を伴い,あらゆる治療に抵抗して死亡したANCA関連血管炎の1例であり,示唆に富む症例であるため報告する.
  • 高橋 英吾, 黒坂 大太郎, 吉田 健, 柳町 麻衣美, 金月 勇, 山田 昭夫
    2010 年 33 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/28
    ジャーナル フリー
      今回我々は麻疹罹患歴のある関節リウマチの患者で,エタネルセプト使用中に麻疹の再罹患が起きたと考えられた症例を経験した.症例は69歳女性.関節リウマチに対して,副腎皮質ステロイド薬に加えてエタネルセプトによる治療を開始し,その8週間後に発熱および食思不振を認め,全身状態不良となり入院となった.細菌感染を疑い第1病日より抗生剤投与を開始するも効果なかった.第4病日より全身に多発する一部に癒合傾向を伴った丘疹性紅斑が出現した.ウイルス感染症を否定するために,各種ウイルス抗体価を測定したところ,麻疹抗体IgG値,IgM値ともに上昇を認め,修飾麻疹と診断した.また,経過中に重度の白血球減少を認め,骨髄穿刺を施行した結果,骨髄の著明な抑制状態を認めた.これは麻疹感染によるものと考えられ,重症の修飾麻疹と考えられた.本症例は,抗TNF-α製剤使用中に修飾麻疹を発症した初めての報告である.抗TNF-α製剤が,麻疹の再罹患および麻疹の重症化に関与した可能性が示唆された.
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