日本臨床免疫学会会誌
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総説
IPEX症候群とヒトTreg細胞
大坪 慶輔金兼 弘和小林 一郎宮脇 利男
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2010 年 33 巻 4 号 p. 196-206

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抄録

  免疫系には免疫抑制機能に特化した制御性T細胞(Treg)とよばれる少数のCD4+CD25+ T細胞サブセットが存在する.この細胞は,自己免疫やアレルギー,炎症といった過剰な免疫反応を抑制して免疫恒常性の維持において非常に重要な役割を果たしている.Tregのマスター遺伝子としてFOXP3遺伝子が機能するという発見により,Tregの生理的意義が明確に証明され,その発生・分化と抑制機能の分子メカニズムを解明するうえで重要な進歩がもたらされた.
  このTregの欠損や機能低下によって生じる疾患がIPEX (immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群である.この疾患は,I 型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢などを主症状とし,さらには自己免疫性と考えられる貧血,血小板減少,腎炎など多彩な症状を呈する.
  現在まで報告されているIPEX症候群の臨床像,分子学的異常とヒトTreg細胞の機能に関して概説する.

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© 2010 日本臨床免疫学会
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