抄録
小児期発症高安動脈炎は全身の炎症所見が強く,治療に難渋する例が多い.ステロイド薬が治療の主軸となるが,本疾患では特に高用量を要することが多く,漸減に伴い再燃する頻度が高い.小児科領域においては好発年齢が思春期,成長期に相当するため,その副作用が特に問題となる.ステロイドのsparing effectを期待して免疫抑制薬が併用されるが,特に重症度の高いHLA-B52陽性例では十分な効果が得られないことが多い.近年,高安動脈炎の病態に腫瘍壊死因子(TNF)αの関与があることが判明し,抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体であるインフリキシマブ(IFX)が本疾患の成人の難治例に使用され,その優れた治療成績が報告されるようになった.今回,既存の治療に抵抗するHLA-B52陽性の小児期発症高安動脈炎3例に対しIFXを投与した.いずれの症例もIFXを導入当初,病勢は抑えられたが,1例は経過中に投与時反応を認め,継続を断念した.また他の2例はIFXを5 mg/kgで継続中に症状,検査所見の増悪があり,7.5 mg/kgに増量し,投与間隔を短縮することで,比較的良好な治療効果が得られた.小児期発症高安動脈炎の難治例に対して,IFXは有望な治療選択肢として考慮されるべきだが,使用にあたっては製剤の特殊性を熟知し,安全かつ良好な治療効果が得られるよう配慮する必要がある.