日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography (FDG-PET) 検査が早期診断と治療効果の判定に有用であった側頭動脈炎の1例
鮫島 謙一中谷 公彦塩山 実章木下 浩二楠 進斎藤 能彦船内 正憲
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2010 年 33 巻 6 号 p. 324-328

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抄録
  症例は61歳,女性.平成20年1月中旬に左側頭部に疼痛が出現,2月中旬から39℃台の発熱が出現してきたため,同年3月に当院神経内科に紹介された.神経学的所見や髄液所見で異常所見を指摘されず,不明熱の精査を目的に同年3月13日に当科に紹介された.入院時,意識は清明で,左側頭部に圧痛を認めたが,同部位に怒脹や発赤は認めなかった.入院時の血液検査では白血球数と血小板数の増加(WBC 9,700/μl, Plt 59.4万/μl)を認めた.また,血沈の亢進(88 mm/h)と炎症反応の上昇(CRP 10.9 mg/dl)を認めた.不明熱の精査のために施行したガリウムシンチグラフィでは左側頭部に極軽度の集積が認められるのみであった.第20病日に施行したFDG-PET検査では,左側頭部に明らかな異常集積を認めた.また,浅側頭動脈エコー検査で側頭動脈のハロー徴候を認めた.検査所見から側頭動脈炎を疑い,第25病日に浅側頭動脈生検を施行,その病理学的所見から側頭動脈炎と診断した.第27病日からプレドニゾロン(40 mg/日)の投与を開始したところ,頭痛は消失しCRPは陰性化した.また,第127病日に施行したFDG-PET検査では入院時に認められた異常集積は消失した.本例は,明らかな側頭動脈の圧痛や拡張等の臨床症状に乏しく,またガリウムシンチグラフィでも明らかな異常集積像はなく,FDG-PET検査が側頭動脈炎の早期診断に有用な1例であった.FDG-PET検査は悪性腫瘍の検索だけではなく,大型血管炎の早期診断,評価に有用であると考えられた.
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© 2010 日本臨床免疫学会
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