日本臨床免疫学会会誌
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総説
血友病における抗第VIII因子同種抗体の出現と消失の免疫学的機序
石黒 精
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2011 年 34 巻 6 号 p. 476-484

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抄録

  血友病は血液凝固第VIII因子(FVIII)を先天的に欠失するために起こる,X連鎖遺伝性の凝固障害症である.欠乏する凝固因子は予防的にまたは出血時に補充されている.輸注された凝固因子製剤中のFVIIIを阻害する同種抗体が出現することは血友病治療の重大な合併症である.この抗体を臨床的にはインヒビターと呼んでいる.インヒビターを保有する血友病患者では,通常の凝固因子製剤の止血効果は著しく低下または消失し,治療に難渋して出血の危険性に晒される.インヒビターの出現を予防できる治療はいまだ定まっていない.大量のFVIII製剤を長期間投与する免疫寛容導入療法は,インヒビターの消失効果が証明されている唯一の治療法である.この治療によって免疫寛容の成立する機序には,いまだ不明の点が多い.本稿ではインヒビター出現と消失の免疫学的知見に関する最近の進歩を中心に述べる.低容量のFVIII製剤をアジュバントなしで静注すると出現するインヒビターを理解し克服することは,免疫学者に対する挑戦状であるといえよう.

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© 2011 日本臨床免疫学会
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