日本臨床免疫学会会誌
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34 巻, 6 号
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総説
  • 神人 正寿
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 6 号 p. 439-446
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      蛋白をコードしていないnon coding RNAの一種で平均22塩基程度の長さを持つmicroRNAは様々なmRNAの3′非翻訳領域の相補的配列に結合し標的mRNAの安定性や蛋白への翻訳を阻害する事で遺伝子発現調節をしている.ヒトゲノムには理論上1000種類以上のmicroRNAが存在し,60%以上の遺伝子を制御しうると考えられている.近年の精力的な研究により,microRNAが多彩な遺伝子の発現を調節することで免疫システムを含む様々な生体活動において重要な働きをしていることが明らかになっている.本稿では特に関節リウマチ,強皮症および全身性エリテマトーデスをはじめとする自己免疫疾患におけるmicroRNAの関与に注目し過去の報告と独自のデータをもとに最新の知見をまとめた.
      各自己免疫疾患におけるmicroRNAの研究により,さらなる病態の解明や新規バイオマーカーあるいは新しい治療戦略の開発が可能となると考えられる.
  • 日髙 利彦
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 6 号 p. 447-455
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)に対する白血球除去療法(LCAP)の治療効果が報告されている.しかし,その効果発現のメカニズムに関しては不明な部分も多い.自験例も含めこれまでの報告で (1) 局所炎症の抑制(滑膜に浸潤する活性化白血球を低減),(2) 全身炎症の抑制(①末梢血より炎症担当細胞の除去,②炎症性サイトカイン(TNFαやIL-6等)を減少させ,抗炎症性サイトカインのIL-10を増加させることによるTH1/TH2サイトカインバランスの是正,③RANTWS等走化因子の低下,④炎症メディエーター(マイクロパーティクル)の低下),(3) 骨髄機能の活性化(ナイーブな血球・リンパ球の動員),(4) リンパ球機能の改善(①P糖蛋白の抑制,②抑制性T細胞機能の改善)等が挙げられる.この総説ではRAに対するLCAP療法の治療効果発現のメカニズムについてレビューする.
  • 松本 功, 岩波 慶一, 田中 陽子, 井上 明日香, 田中 勇希, 梅田 直人, 住田 孝之
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 6 号 p. 456-463
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(rheumatoid arthritis : RA)においては,TNFαやIL-6及びT細胞共刺激分子をターゲットにした生物学的製剤の有効性が証明され,これら分子の重要性が再認識されている.また欧米においては,B細胞表面抗原に対する抗体である抗CD20抗体がRAにも第二選択の生物学的製剤として使用され,強い有効性が実証されている.RA診断においては,リウマトイド因子(rheumatoid factor : RF)や抗シトルリン化蛋白抗体(anti-citrullinated protein antibody : ACPA)が特異性の高い抗体として重要であるが,病因性への関与に関しては不定の部分が多く,ACPAに関してはターゲットであるシトルリン化抗原も諸説存在する.本論では,モデルマウスでの自己抗原として2つのモデルで実証されている解糖系酵素glucose-6-phosphate isomerase(GPI)に主に焦点をあて,ヒトRAでの病因的意義について論ずる.
  • 赤真 秀人
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 6 号 p. 464-475
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      Henchが関節リウマチ(RA)患者に初めてステロイド(コルチゾン)を試用したのは1948年であった.諸刃の剣であるステロイドの歴史を繙くと,21世紀のリウマチ医も改めて学ぶべき点が少なくない.本稿では基礎研究からは,脂肪組織などの細胞内でコルチゾン(不活性型)からコルチゾール(活性型)への変換を促進する11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1について簡潔に概説する.さらにステロイドのnon-genomic作用機構とメチルプレドニゾロンパルス療法との関係も推察する.臨床面では,わが国の大規模コホート研究と生物学的製剤の全例調査で得られる実地臨床データを利用して,ステロイドの使用実態を紹介する.近年,日本でも各種生物学的製剤が続々と登場している.ステロイド併用率・投与量の変遷を追跡すること,RA低用量ステロイド療法におけるeffectivenessの詳細を明確化すること,などは今後の課題といえる.いくつかの用語の定義や解説も加え,ステロイドに関する話題を提供する.
  • 石黒 精
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 6 号 p. 476-484
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      血友病は血液凝固第VIII因子(FVIII)を先天的に欠失するために起こる,X連鎖遺伝性の凝固障害症である.欠乏する凝固因子は予防的にまたは出血時に補充されている.輸注された凝固因子製剤中のFVIIIを阻害する同種抗体が出現することは血友病治療の重大な合併症である.この抗体を臨床的にはインヒビターと呼んでいる.インヒビターを保有する血友病患者では,通常の凝固因子製剤の止血効果は著しく低下または消失し,治療に難渋して出血の危険性に晒される.インヒビターの出現を予防できる治療はいまだ定まっていない.大量のFVIII製剤を長期間投与する免疫寛容導入療法は,インヒビターの消失効果が証明されている唯一の治療法である.この治療によって免疫寛容の成立する機序には,いまだ不明の点が多い.本稿ではインヒビター出現と消失の免疫学的知見に関する最近の進歩を中心に述べる.低容量のFVIII製剤をアジュバントなしで静注すると出現するインヒビターを理解し克服することは,免疫学者に対する挑戦状であるといえよう.
  • 秋山 雄次
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 6 号 p. 485-492
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      近年,血液透析患者が増加しているため,関節リウマチ患者の中でも透析療法が必要な症例をみかけるようになってきた.疾患活動性が高く疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の適応にある場合でも,多くの場合は非ステロイド系抗炎症薬や副腎皮質ステロイドのみで治療されていることが多い.そのような治療の顛末は関節破壊を招来し,日常生活動作の低下が免れないことが多い.DMARDsが使用されない原因としては透析療法中においてDMARDsの使用方法が判然としないことに起因している場合が多いと推測される.本論文では血液透析患者における生物学的および非生物学的抗リウマチ治療について概説した.
  • Yuki NANKE, Toru YAGO, Shigeru KOTAKE
    2011 年 34 巻 6 号 p. 493-500
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      Finding the means to ameliorate and prevent bone destruction as well as control inflammation is an urgent issue in the treatment of rheumatoid arthritis (RA). Recently, it has been demonstrated that osteoclastogenesis plays an important role in the bone destruction and pathogenesis of RA. Here, we review the effects of disease modifying anti-rheumatic drugs (DMRAD) on the amelioration of bone destruction and osteoclastogenesis.
症例報告
  • 東 直人, 森本 麻衣, 坪田 典之, 白野 倫徳, 黒岩 孝則, 藤田 計行, 日野 拓耶, 野上 みか, 西岡 亜紀, 岡﨑 ...
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 34 巻 6 号 p. 501-509
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      73才,女性.1998年関節リウマチを発症.2007年よりエタネルセプト(ETN)が開始され,プレドニゾロンおよびメトトレキサート(MTX)との併用で低疾患活動性を維持していた.結核罹患歴はないが,ETN開始時よりイソニアジドを予防的に内服された.2010年8月高熱,腹部膨満感を自覚し,腹部CTで多量の腹水貯留を認めたため当科入院.ETNおよびMTXは中止し,抗生剤投与を行ったが奏功しなかった.腹水検査ではADAが104.9 U/lと高値で,細菌および真菌培養,抗酸菌塗抹検査は陰性であったが,PCR法でMycobacterium tuberculosis陽性,培養検査も陽性で,イムノクロマト法でM. tuberculosisと同定でき,結核性腹膜炎(TBP)と診断した.結核診療専門施設に転院し,抗結核薬4剤による化学療法が開始され,速やかに改善した.TBPは頻度が低く,生物学的製剤使用中の合併報告も多くない.ETN使用中に限ると1例報告されているのみである.TNF阻害薬使用中の腹部症状出現時は常に「疑い」,その上で各検査法の特性,限界を考慮した適切な診断を行うことが重要である.
  • 栗原 夕子, 奥 佳代, 鈴木 厚, 大曽根 康夫, 半田 みち子, 岡野 裕
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 34 巻 6 号 p. 510-515
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は63歳,男性.28歳発症の緩徐進行性1型糖尿病(SPIDDM)の経過中,2004年2月(58歳)に微熱,頭痛,血痰を認めた.画像所見および経気管支肺生検病理像で肺胞出血と肺胞隔壁炎を認め,ミエロペルオキシダーゼ特異的抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)が129 U/mlと高値より,顕微鏡的多発血管炎と診断した.ステロイドパルス療法後プレドニゾロンおよびシクロフォスファミドによる治療で改善した.その後,慢性副鼻腔炎,中耳炎が持続し,2009年に鞍鼻が見られたことから,限局型ウェゲナー肉芽腫症との鑑別が問題となったが,病理組織学的には診断できなかった.2009年6月に複視が出現した.右外転神経麻痺を認めたが,頭部造影MRIでは異常を認めなかった.同年8月右外転神経麻痺に加え右V, VII~XIIの多発脳神経障害が出現し再入院した.頭部造影MRIで造影効果を認める肥厚した硬膜の所見があり,MPO-ANCA陽性血管炎に関連する肥厚性硬膜炎と診断した.プレドニゾロン増量とシクロホスファミドパルス療法で改善した.
      SPIDDMの経過中にMPO-ANCA陽性血管炎による肺胞出血と肥厚性硬膜炎を合併する報告例はこれまでになく,貴重な症例と考え報告する.
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