日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
視神経脊髄炎(NMO)の治療をめぐって
藤原 一男
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 2 号 p. 129-135

詳細
抄録

  視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica, NMO)は重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする免疫性中枢神経疾患でありDevic病とも呼ばれてきた.NMOは女性に多く,重度の機能障害を遺し,脊髄病変は3椎体以上の長い病変を呈する.脳病変もまれではない.NMOと多発性硬化症(MS)の関係は長い間議論されてきたが,NMO患者の血中には疾患特異的な自己抗体(抗aquaporin 4 (AQP4) 抗体,NMO-IgGとも呼ぶ)が発見された後,MSとの相違点が明らかになった.脱髄疾患であるMSとは異なり,NMOは抗AQP4抗体が補体を活性化してアストロサイトを破壊するアストロサイトパチーである.最近の研究結果からは,抗AQP4抗体の枯渇,再発のトリガーとなる中枢神経のT細胞性炎症の抑制,抗IL-6療法などが治療上有効と考えられる.診療現場では,急性期にはまずステロイドパルス療法を行うが,無効の場合はすぐに血漿交換療法を開始することにより臨床的改善が得られることが多い.再発予防にはステロイドや免疫抑制剤,リツキシマブなどが有効であり,これにより年間再発率は低下する.また抗補体療法であるエクリズマブも有効のようである.一方,MSの治療薬であるインターフェロンβはNMOでは無効である.疼痛など慢性期の症状に対する対症療法も患者のQOL向上の点から重要である.他疾患と同様にNMOでも早期診断,早期治療が重要であるが,今後その病態に基ずいた治療法が開発されることを期待したい.

著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top