日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
症例報告
多発性筋炎の父子例
竹中 健智宮部 斉重笠井 祥子松本 卓長坂 憲治
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 2 号 p. 144-149

詳細
抄録

  多発性筋炎の原因は不明であるが,遺伝的な素因を背景に,何らかの環境因子に暴露され発症すると考えられている.我々は,親子でほぼ同時期に多発性筋炎を発症した症例を経験した.1例目(父親)は73歳男性,職業は農業.発熱,筋力低下,筋原性酵素上昇を来たし多発性筋炎と診断.グルココルチコイドにて症状と筋原性酵素は改善した.2例目(息子)は44歳男性.職業は会社員であったが,父親の病気を契機に実家に転居するとともに農業に転職.その後,筋力低下,筋原性酵素上昇を来たし,MRI,筋電図,筋生検から多発性筋炎と診断.グルココルチコイドと免疫抑制薬の併用で,症状と筋原性酵素は改善した.この2症例は発症年齢が73歳と44歳と異なるものの,両者の発症の間には1年の期間しか開いておらず,さらに息子は父親と同じ農業に転職した直後に発症した.非血縁者の同居人や同居していない他の血縁者で筋炎を発症した人はおらず,親子というある程度共通した遺伝的背景に加えて,同じ生活環境のもとで筋炎を発症したことから,筋炎の発症機序を考えるにあたって,興味深い症例と考え報告する.

著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top