日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム1-3  制御性T細胞と自己免疫
藤尾 圭志岡村 僚久住友 秀次岩崎 由希子岡本 明子松本 巧山本 一彦
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2012 年 35 巻 4 号 p. 274

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抄録

  これまで自己免疫応答を抑制するT細胞サブセットとして,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性T細胞以外の制御性T細胞の存在が推測されてきた.我々は新たにIL-10を高産生するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞を見出した.このCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は,アナジーと関連する転写因子Egr2を高発現し,Egr2はCD4陽性T細胞にLAG3発現とIL-10産生の形質を付与する.今回SLEモデルマウスMRL/lprマウスで細胞移入を行うと,MRL/+マウス由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は腎炎の進行・自己抗体価の上昇を抑制したが,CD4陽性CD25陽性T細胞は抑制しなかった.さらにB6マウス由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は,B細胞とヘルパーT細胞を移入したRAG1欠損マウスの免疫による抗NP-OVA抗体産生,胚中心B細胞の分化を抑制した.CD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は試験管内の抗NP-OVA抗体産生も有意に抑制した.これらのことからCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞はB細胞の抗体産生,全身性自己免疫疾患を抑制する活性を持つと考えられた.今後Egr2の発現機構を中心とするCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞の分化機構を解明することで,新たな自己免疫疾患治療法の開発につながる可能性があると考えられる.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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