日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム1-4  中條-西村症候群の分子機序
井田 弘明有馬 和彦金澤 伸雄吉浦 孝一郎
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2012 年 35 巻 4 号 p. 275

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抄録

  中條-西村症候群は,昭和14年に本邦で初めて報告された,皮疹,脂肪萎縮(リポジストロフィー),筋萎縮,手指を中心とした関節症状,大脳基底核の石灰化,発熱,高ガンマグロブリン血症などを特徴とする常染色体劣性遺伝形式の自己炎症症候群である.
  私たちは,最初の報告から70年目の平成21年にGeneChipアレイを用いたSNPsによるhomozygosity mappingで遺伝子座(6p21.31-32)と疾患遺伝子(PSMB8)を同定した.アミノ酸置換を伴う点変異(G201V)であり,免疫プロテアソームの一つのコンポーネントの異常でプロテアソーム形成不全をきたし,3種類のプロテアーゼ活性が低下していた.
  次に,多彩な症状を示す本疾患の病態を検討した.患者血清中のサイトカイン・ケモカインは,IL-6, IP-10, MCP-1, G-CSFが有意に上昇,患者線維芽細胞・末梢血の検討では,NF-kB非依存性であり,ユビキチン化蛋白の蓄積,リン酸化p38の蓄積(核内)を認めた.患者線維芽細胞では,LPS刺激で著明に活性酸素種(ROS)の産生・蓄積がみられた.
  近年,欧米から似た疾患(JMP症候群,CANDLE症候群)が報告され,ともにPSMB8の変異に起因するプロテアソーム機能不全症であった.世界に先駆けて本邦で発見されたこの病気の解析から,免疫プロテアソームの新しい役割が解明されつつある.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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