日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
スポンサードシンポジウム
スポンサードシンポジウム1  抗リン脂質抗体測定の意義
渥美 達也
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 4 号 p. 282

詳細
抄録

  抗リン脂質抗体症候群(APS)は,自己免疫血栓症あるいは自己免疫妊娠合併症と理解され,患者血中に存在する一群の抗リン脂質抗体は病原性自己抗体であると認識されている.抗リン脂質抗体は抗原特異性は多様であるが,おもな対応抗原は,リン脂質に結合したβ2-グリコプロテインIとプロトロンビンである.
  抗リン脂質抗体測定の臨床検査はAPSの診断のためにおこなわれる.抗リン脂質抗体は免疫学的にも機能的にも多様な自己抗体群で,どのように抗リン脂質抗体を同定するかはAPSの概念の提唱以来の重大な問題であった.抗リン脂質抗体,とくに凝固アッセイでのループスアンチコアグラントは,検出アッセイの技術上の問題で偽陽性がでやすい.また,感染症や他の疾患でも一過性もしくは低力価の偽陽性をよく経験する.一方,臨床的に抗リン脂質抗体症候群を強く疑っても,現在の手法の範囲では抗リン脂質抗体を検出できないこともある.そのため,我々は抗リン脂質抗体検出の精度を常に検証していかなければならない.さらに,診断のみならず,抗リン脂質抗体のプロフィールから血栓症再発のリスクを予想することも試みられる.
  この演題では,APSの臨床的特徴を論じて,日常の診断に必要な抗リン脂質抗体検査とその解釈,現時点で可能な治療法についての知見に言及する.

著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top