日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム2-5  関節炎発症に於ける補体の役割とC1qTNFによる制御
岩倉 洋一郎
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2012 年 35 巻 4 号 p. 281

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抄録

  我々はこれまでにHTLV-Iトランスジェニック(Tg)マウスとIL-1レセプターアンタゴニスト欠損(IL-1Ra−/−)マウスの2種類の関節リウマチのモデルを作製した.両者とも,肉芽様組織の浸潤を伴う関節破壊と滑膜および関節周辺の顕著な炎症が認められ,IgGおよび2型コラーゲンに対する自己抗体価の上昇が見られた.また,IL-1およびIL-17は両モデルで関節炎の発症に重要な役割を果たしているが,IL-6およびTNFはそれぞれHTLV-I Tgモデル,およびIL-1Ra−/−モデルで発症に必要であることがわかっている.これらのモデルの関節で遺伝子発現を網羅的に解析し,C1qTNFの発現が亢進していることを見いだした.そこで,関節炎発症に於けるこの遺伝子の役割を知るために,遺伝子欠損マウス,およびTgマウスを作製した.それぞれのマウスを用いてコラーゲン誘導関節炎を誘導したところ,欠損マウスでは症状が悪化し,Tgマウスでは軽症化することがわかった.欠損マウスの血中の補体C3aレベルの亢進が認められたことから,補体系に対する作用を検討したところ,この分子は補体系の活性化を強く阻害することがわかった.また,この分子を投与することにより,コラーゲン誘導関節炎を治療できることがわかった.この結果,C1qTNFは内在性の補体系調節因子であり,抗炎症剤として有用であることがわかった.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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