日本臨床免疫学会会誌
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スポンサードシンポジウム
スポンサードシンポジウム4  グルタミン酸受容体に対する自己抗体(抗 NMDAR 抗体)と辺縁系脳炎
鈴木 重明
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2012 年 35 巻 4 号 p. 285

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抄録

  辺縁系脳炎には自己抗体が原因となる疾患があり,対応する自己抗原が次々に同定されている.代表的な疾患は2007年に報告されたグルタミン酸受容体であるN-methyl-D-aspartate receptor(NMDAR)に対する自己抗体が原因となる抗NMDAR脳炎である.卵巣奇形腫に合併することが多く,抗体エピトープはNR1と考えられており,cell based assayによる検出が行われている.
  若年女性(女性は81%)が中心で,腫瘍の合併頻度は39%,うち96%が奇形腫である.感冒様症状を前駆症状として,重篤な精神障害,記憶障害,痙攣や意識障害を呈する.しばしば顔面を中心とする不随意運動,人工呼吸管理を必要とする呼吸抑制,自律神経障害を呈する.病初期には精神疾患が疑われ精神科に入院することがあるが,呼吸抑制など全身管理が必要となりICU管理が行われる.無反応期にはcatatonic-like stageとなり,持続的な目を開閉眼させるような顔を中心として不随意運動が認められる.自律神経症状としては血圧変動,心拍数の変動,高体温,唾液過多などを特徴とする.
  無治療であっても自然回復が可能性であるが,早期の免疫治療が予後改善に重要である.ステロイド,血液浄化療法,免疫グロブリンが治療の基本であるが,難治例ではシクロフォスファミドやリツキサンも使用される.腫瘍は可能な限り早期に摘出すべきであり,摘出した奇形腫にはNMDARが発現しており,抗原提示の場になっているものと考えられる.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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