日本臨床免疫学会会誌
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スポンサードシンポジウム5  抗 ADAMTS13 抗体と血栓性血小板減少性紫斑病
松本 雅則
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2012 年 35 巻 4 号 p. 286

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抄録

  血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,血小板減少,溶血性貧血,腎機能障害,発熱,精神神経症状の5徴候で有名な疾患である.無治療では致死率90%以上の予後不良な疾患であるが,血漿交換の実施により致死率が20%程度に低下する.長く原因不明であったが,von Willebrand因子(VWF)切断酵素であるADAMTS13の活性著減が病因であることが明らかとなった.ADAMTS13活性著減により,血小板との結合能が非常に強い超高分子量VWFマルチマー(UL-VWFM)が切断されずに血液中に存在し,微小血管で血栓を形成することで,TTPが発症すると考えられている.後天性TTPではADAMTS13に対する自己抗体(インヒビター)が産生されることで同活性が著減する.自己抗体の大部分はIgG型のインヒビターであるが,少数例でIgA型やIgM型が確認されている.
  TTPにおいてもADAMTS13活性が著減しない症例が存在するが,本邦での我々の解析では,後天性特発性(ai)TTPの約69%が著減例であった.また,ADAMTS13活性が5%未満のai-TTP186例中182例(98%)でインヒビターを認めた.後天性TTPにおけるADAMTS13インヒビターの臨床的意義として,治療前にインヒビターを検出した症例では再発率が高く,インヒビター力価が高い症例ほど血漿交換への反応が悪く,早期死亡が多いこと,などが報告されている.以上のようにADAMTS13活性と自己抗体は,TTPの診断,治療および予後に関する重要なバイオマーカーとなっている.

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