日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
モーニング教育講演
モーニング教育講演  免疫記憶の形成と維持
徳久 剛史
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 35 巻 4 号 p. 290

詳細
抄録

  生体がウイルス感染を受けると,獲得免疫系が活性化してウイルスを駆逐する(一次免疫応答).この時同時に活性化したリンパ球の一部が二次リンパ組織の胚中心(Germinal Center)で免疫記憶細胞に分化して,その後長期にわたり維持される.次に同一ウイルスの再感染により,この免疫記憶細胞が素早く活性化して効率良くウイルスを駆逐する(二次免疫応答).最近になり,自己免疫疾患や難治性アレルギー疾患などの慢性炎症性疾患は,自己抗体や高親和性のIgE抗体を産生するB細胞やプラズマ細胞が有害な免疫記憶細胞として長期にわたり生体内に生存することで,その病態が維持されると考えられるようになってきた.さらに自己抗体産生細胞の分化する場が胚中心であることも明らかにされた.私たちの教室では,胚中心における記憶B細胞や長期生存プラズマ細胞の分化と維持の機構について,胚中心形成に必須であるBCL6(転写抑制因子)のトランスジェニックマウスやノックアウトマウスを作製して,その胚中心形成における機能を分子レベルで解明しようとしている.本講では,胚中心における高親和性記憶B細胞と長期生存プラズマ細胞の分化機構と,それらの長期生存機構に関する最新情報を,私たちの研究成果とともに紹介する.

著者関連情報
© 2012 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top